SENNHEISER IE80/ゼンハイザー IE80

<見た目は華奢でも、高級大型ヘッドホンをも凌駕する凄いやつ>




(注:下記のレビューはあくまでも私が個人的に感じたものであり、その感じ方には個人差があることをご理解願います。
   また、個人による感じ方以外に音源の質や接続機器等、再生環境によっても大きな差が生じる点もご理解願います。)

<Photo :とんかつサンド>       (2012年2月17日内容更新)    



【カナルは苦手なんだけど・・・】
僕は普段、家の中では主にゼンハイザーのHD800(ヘッドホン)を、そして屋外ではオーディオテクニカのEW9(耳掛け式イヤホン)を使用している。
(初めてここを訪れた方のために、僕のヘッドホンレビューのページは→こちら
EW9のレビュー内でも書いたのだが、僕は基本的にカナル型といわれるイヤホンが苦手で、それが理由で実質的にカナル型のイヤホンを購入した事が無い。
(試聴は何度かしたことはあるけれど、、。)
実質的にというのは、布団に入って音楽を聴きながら眠る用に、耳に入れても邪魔にならないカナル型のイヤホンをダイ○ーから何度か買ってはそれで我慢して使用している程度。
その他、イン・イヤータイプは1,000円台程度のものを過去に何度か買っては使い潰している程度だ。

しかし、昨年の暮れにゼンハイザーからIE8の後継機(併売してるから上位機?)となるIE80が発売され、それがまた実に好評のようだ。
あまりにも多くの方が絶賛するので、気になって気になって夜も眠れず(いや、正直グッスリと寝てますけどね、、、。)
ということで、いちいち悩む暇があったら買っちまえ!ということで一切の試聴もせずに、通販によってIE80を購入してみた。

実際に現物を手に取ってみると、日ごろHD800のようなオーバーヘッドやEW9ばかり見ているせいか、異様に小さく華奢に見える。(重さは約16グラム)
これで32,220円なのだから、グラム単価に換算すると100グラムあたり20万円にもなり、大間の本マグロ大トロも裸足で逃げ出す単価だ。
ちなみに実売16万円のHD800ですら、100グラムあたりの単価は43,000円なのだから、、、(爆)

まあ、くだらない話はさておき、IE80の本体はかなり丁寧な仕上げが施されており、ハウジングの接合部やアルミプレートの貼り付けによるクリアランスなど、ドイツの企業による設計
らしさを感じ取る事ができる。
なお、組み立て工場は中国となっている。

ケーブル長は1.2メートルで、EW9のように(DAPを)胸ポケット収納に合わせたケーブル長さにプラスして、延長ケーブルで腰周り収納に対応するというタイプではなく、継ぎ目無しの1
本もの。
そのため、腰周りの高さにDAPを収納する場合は丁度良い長さであるが、胸ポケットに収納する場合、ケーブルに何も処置を施さなければヘソのあたりまで垂れ下がってUターンする
形となる。






↑化粧箱はかなり凝った作りになっており、開閉の表紙部分はマグネットで閉じるようになっている。  



↑ケーブルは着脱式になっており、断線した場合や音質チューニング等によるケーブル交換も容易に可能となる。



↑プラグはL字型で、残念ながら金メッキタイプではない。


【ベストな装着ポジションを見つけるまでに一苦労・・・】
また、装着方法が今まで僕が使ってきた、一般的なケーブルが下に垂れるタイプとは逆方向の上方向へ抜けて耳の付け根をぐるっと1周回して下へ垂らす、いわゆる「Shure 掛け」と
いうタイプの装着方法となる。
カナル型のイヤホン自体が僕にとって経験が殆ど無いというのに、更にこの装着方法は僕自身も初体験であったこともあり最初は色々と難儀した。

最初は顔の向きに対して平行垂直に装着したところ、高音域の一部の周波数帯域が何かに干渉して打ち消されてしまうようで、自然な周波数特性では聴こえてこなかった。
言い方を変えると、倍音が全く聞こえないのだ。
そこで色々と試行錯誤した結果、クルマのタイヤセッティングで言うところの「トー・イン&ネガティブ・キャンバー」がベストだということが判った。
つまり、頭部を上から見ると前に向かって狭くなり、正面から見ると下に向かってハの字型に広くなるセッティングだ。
この向き&角度で装着することにより、低域から高域にかけて満遍なく自然な周波数特性で音が(脳内で)再現されることが判明した。
まあ、あくまでも「僕の場合は・・・」だけど、、、(苦笑)


【付属品について】
イヤーチップはIE8と同様、様々な形やサイズのものが付属する。
僕の場合は標準タイプの丸いヤツのLが丁度良い感じであった。

収納ケースにも力が入っており、カバーとインナーは高い精度で作り込まれている。
カバーにインナーケースを挿入する際に、しっかりとした「スフォ感」を得ることが出来る。
その他の付属品としては、イヤーフック、ケーブルクリップ、低音ボリューム調整&クリーニング用スティック、ケース内蔵乾燥剤、説明書&保証書などがある。



↑付属品は充実しており、特にイヤーピースの種類は多めに用意されている。
 画像には写っていないが、この他にクリーナー兼低音量調整用ドライバーがケース内に収められている。  



↑付属ケースはかなり精巧に出来ており、各部がピッシリと気持ち良いくらいに収まりが良い。  





【IE80の音について】
さて、今回は僕にとって実質的に初カナルということもあり、他の多くの方々のようにIE8や他のカナル型イヤホンとの比較レビューはできない。
HD800やW1000X、W5000といったオーバーヘッドユーザーとして、(W5000は既に手元には無いが、、、)このIE80がどのように受け入れられるのか?という観点でレビューしたい。

ちなみに現時点においてIE80は約20時間ほど音出しによるエージングを実施済みであり、再生環境はiPhone4SにIE80を直挿しした状態と、PCオーディオ環境による「foobar2000→
USB出力→LUXMAN DA-200(DAC)→XLR接続→LUXMAN P-1u(HPA)」という両極端な環境で再生してみた。
また、後者は16bit44.1kHzのmp3から、24bit 96kHzのFLAC & WAVファイルを使用。
ジャンルはジャズ、クラシック、ハードロック、フュージョン、ブルース、テクノ等々、を片っ端から聴き漁ってみた。

で、実際にIE80を聴いてみた感想であるが、正直言ってぶったまげた、、、。
こんな小さくて軽くて華奢な物体から、どうしてこれ程の迫力のある音を出力させる事が出来るのか、、、、。
自然でワイドでありながら、力強く引き締まった低域、適度に厚み感のある中域、そして鈴のように鳴り響き、倍音すら感じ取れる高域。
それでいて音場も決して狭くはなく、僕が今までに感じてきた、イヤホン特有の「脳内だけで音が鳴っている」感じとは無縁の自然な広さの音場。
ウッドベースやピアノといった生楽器たちの生々しい音も見事に再現されている。

なんとなく、僕のお気に入りでもある、オーディオテクニカのW1000Xに近い感じだ。
いや、そのW1000Xよりも低域から中域にかけてのつながり方はIE80の方が自然で、更に音場はIE80の方が広いとさえ感じる。
セミオープン型のオーバーヘッド型のヘッドホンっぽい鳴り方をしていると思う。
(ちなみにW1000Xは仕様上では密閉型となってはいるが、実は密閉型ではなくセミオープンなのだ。)

さすがにHD800と比較してしまうと、一音一音の精度や分離感、自然なダイナミックレンジ感(?)など、及ばない部分は色々と多く見えてしまうが、こと、低域成分の量だけに関して言え
ば、HD800よりも多く出ている。(さすがに質では劣ってしまうが。)
IE80からHD800に切り替えた瞬間、「あれ?このHD800、音が軽い??」と一瞬思ってしまうほどだ。

ネット上での情報や、IE8を持っている僕の知人の話などによると、IE8では高域に若干の篭り感があったらしいのだが、このIE80に関しては、僕が使う限り篭りや霞みといった感じは微
塵も感じられない。
ただ、上にも書いたように、装着のセッティングがしっかりと合っていない場合は、高域にマスクしたような音になってしまうことがあり、僕の場合はベストポジションを見つけ出すまでに
約1日を要してしまった(苦笑)
しかし、IE8とIE80の両方を所有している方々からもIE80は高域の伸びが改善されているという意見が多いことからも、やはりこの自然で伸びやかな高域はIE80ならではのものなのだ
ろう。
また、タッチノイズに関しては全く感じ取れないレベルで、この点が気になっている方は全く心配する必要は無いと思う。

以上は全てiPhoneに直挿しした場合の感想であるが、PCオーディオ環境で使用すると、IE80の印象は更に驚異的な変貌を遂げる。
僕の両耳はフリーな状態であるにもかかわらず、まるで大型のハイエンドヘッドホンを使用しなければ実現できないかのような広い音場と重厚で繊細なトーンが、頭部の内部だけでは
なく、頭部周囲へも広がって聴こえているからだ。
まあ、普通に考えればDA-200→P-1u→IE80という環境で使用することは、少々考えにくい事ではあるのだが、、、、(苦笑)


【低域調整機能について】
このIE80には、IE8と同様に低域調整ボリュームが装備されている。
これは、マイナスネジによる無段階調整式のボリュームが本体の天板(?)に備えられているもので、反時計方向で低域が少なめに、時計方向で増幅傾向に可変する。
構造的には電気的に増減させている訳ではなく、ネジの周りにスポンジ(ウレタンか?)製のスリーブが巻きつけられており、そのスリーブの周囲に樹脂製のカラーが被せられている。
それらのパーツ郡が金属製の小さなボックス状のハウジングに収められている。
反時計方向いっぱいの状態ではスポンジはフリーの状態になっており、時計方向に回すことで樹脂製カラーがスポンジを圧迫し、金属性のハウジングとの締結感が増加する。
これによって金属ハウジング全体の質量が増加して、低域を増幅させる構造のようだ。
ちなみに僕の場合は、最も低域の少ない、反時計方向いっぱいでも十分な低域を再現できている。


↑低音調整機構の中身。
 画像は低音弱側いっぱいの状態で、スポンジと金属プレートが離れている。
(画像はIE8のもので、海外サイトより拝借)



↑一方、こちらは低音強側いっぱいの画像。
 スポンジが金属プレートに押さえつけられているのがお判り頂けると思う。


【最後に・・・】
僕にとっての初カナル型イヤホンとなるこのIE80。
評判が良いとは言いながらも、僕が日頃愛用しているオーバーヘッド型のモデル達には到底敵わないレベルなのだろうと勝手に思っていたが、まさかこんな小さなイヤホンから、これほど
広大で重厚で迫力のある音が出力されるとは全く想像していなかった。
今回は話題性に乗せられて、半ば衝動買い的に軽い気持ちで入手したのだが、SENNHEISER IE80という製品の魅力を完全に見くびっていた。
僕が所有しているイヤホン&ヘッドホン達に対し、あくまでも僕個人の私的主観によって総合点別の順位をつけるとした場合、下記のようになる。

(仮にHD800を「100」とした場合・・・)

・HD800    → 100
・IE80      → 83
・ATH-W1000X→ 80
・ATH-EW9   → 63
・ATH-W5000 → 60
・ATH-AD700 → 40
・100均カナル →  5
・iPhone純正  →  3

以上、あくまでも僕の主観による順位つけでは上記のようになる。
オーテクのフラグシップモデルであるW5000の採点が異様に低いのは、音の解像度や音場、レンジ感云々が優れているという事よりも、僕にとってあまりにも不自然な周波数特性(特に
アコースティック系楽器の音が現実離れし過ぎ)が受け入れられなかった点が大きく影響しているという事を了承願いたい。(あくまでも、僕個人の印象だ。)

また、このIE80だけに限ったことではないが、イヤピースの形状や材質やサイズによる音質への影響も大きいので、イヤピーススパイラルに嵌ってしまう人が多いというのも納得できる。
それと、耳への微妙な挿し込み具合によってガラリと大きく音質が変化することもあり、このベストポジションを見つけ出すことが出来なければ、IE80の本当の魅力に気がつく事が出来な
いという場合も有り得るかもしれない。

それにしても、これだけの性能を実現しているのであれば、逆に32,200円という価格は決して高くは無いとも思えるようになってきた(汗)
(記:2012年2月5日)


【↓2012年2月17日追加情報↓】<IE80の音が気持ちよすぎる>
IE80を入手してからおおよそ2週間が経過した。
実を言うと、この2週間は家の中でもIE80ばかり使っている。
これまでのDA-200→P-1u→HD800という組み合わせの中の「HD800」の部分が完全に「IE80」に取って代わってしまった(苦笑)
勿論、音の細かいディテールや表現力ではHD800に敵わないが、それでもIE80を使いたいと思わせる何かがこのIE80にはあるのだ。
こんな小さな物体を耳に詰め込んでいるだけなのに、まるで大型ヘッドホンを使っているかのような迫力ある音が出てくる事の不思議な違和感が、今のボクにとって快感になっているのか
もしれない(笑)
上のレビューでは「DA-200→P-1u→IE80という環境で使用することは、少々考えにくい・・・」なんて書いているが、こんなアホな環境で使用しているのは僕くらいなものかもしれないね(苦笑)


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