オーディオテクニカ イヤフィットヘッドホン ATH-EW9「Sovereign」

audio-technica ATH-EW9「Sovereign」






(撮影:とんかつサンド/しまじろう)





(注:下記のレビューはあくまでも私が個人的に感じたものであり、その感じ方には個人差があることをご理解願います。)


【EW9、それは耳かけ式ヘッドホン愛用者にとって憧れの逸品】
iPodに合うお手頃なイヤホンを探すという目的で色々と動いていたのだが、先日のAL-202やEQ700のレビューを見ていただいた方
はご存知のように、僕にとっては耳かけ式(イヤーフック)タイプがベストなのであった。
そんな耳かけ式愛用者(?)にとって気になる存在がある。それがオーディオテクニカのATH-EW9である。

この製品は今からちょうど6年前の2003年11月21日に発売されたモデルであり、以前からオーディオテクニカのヘッドホンシリーズ
の最高峰グレードにはハウジングに天然木(北海道産のアサダ桜の無垢材など)を使用したモデルが用意されていた。
それが耳かけ式ヘッドホンシリーズにも採用されたもので、当時は天然木を使用したEW9他にアルミ材やチタン材を採用したモデル
もラインナップされていたのだが、2009年11月の現時点においてはEW9だけを残して他のモデルは全て生産終了となっている。
このEW9、発売当時は結構な話題にもなっており、僕もその発売当時からこのEW9の存在は知っていた。
しかし前にも書いたように、当時の僕は耳かけ式に一切の興味が無かったので、特に試聴もしないまま今日に至っていた。

ところが今ではドップリと耳かけ式の魅力にはまってしまい、これまでは同じオーディオテクニカ製のATH-EQ700に満足していたのだ
が、そんな僕が耳かけ式フラッグシップモデルであるEW9に興味を示さないわけが無いのだ(苦笑)

しかし、いくらフラッグシップモデルとは言ってもEW9は今から6年も前に発売されたものであり、対して2008年に発売され、低価格モ
デルとはいえ現在のヘッドホン・テクノロジーが採用されているであろうEQ700と比べてそれ程違うものなのだろか?という不安があ
った。
また、EW9のマグネットドライバーは28mmなのに対し、EQ700は30mmドライバーを採用している点も少々気になるところ。
ということで、いくらカタログと睨めっこをしていても何の解決にもならないので、EQ700との比較試聴をすることにした。

いつものショップにEW9の試聴品は無いので、少し離れたEW9が試聴可能なショップにiPod nanoとEQ700を持ち込んで比較を試みた。
で、実際に色んなジャンルの曲を片っ端から聴き比べていったのだが、その作業に1時間半以上の時間を費やしてしまった。
正確に言うと、その時間の殆どは聴き比べていたというよりも、EW9の音色に聴き入ってしまっていたと言う方が正しい(苦笑)
ということで勿論、この日はEW9を購入し帰宅した。



↑高級品としての雰囲気を盛り上げてくれる化粧箱。
 このまま飾っておきたいくらい?



↑本体の他に、専用ポーチ、1m延長コードが付属されている。





【やはりフラッグシップらしい音質に満足】(約20時間以上のエージングを実施後の感想)
EW9の基本的な音作りはオーディオテクニカらしいもので、その方向性はEQ700と概ね同じ方向を向いている。しかし、全ての音域の
分解能と表現力、リアリティおいてEW9はEQ700を超越している。
EQ700に比べて驚かされた場面は数多くあったのだが、ドラムのトップシンバル(ライドシンバル)に「チン!チン!チン!」というリズム
を刻んでいる音色には、このシンバルの物理的な厚みや重みがハッキリと感じ取る事ができた。
(ライドシンバルというのは、曲中にシャーーーン!というアクセントに使われるクラッシュシンバルよりも板厚が厚く、大きな鋼板ででき
ているので、低くて重い音が出る。)
また、ウッドベースの音に関してもEQ700より輪郭のはっきりとした解像感のある出音になっており、一度EW9の音に慣れてしまうと、そ
れまでは満足していたはずのEQ700の音はぼやけた不鮮明な音に感じられてしまうようになってしまった。
また、高域側と低域側の両域において、その再生能力はEQ700よりも広く余裕があり、ドライバーユニットがEQ700よりも小さい事など微
塵も感じさせない。

一般的に耳かけ式ヘッドホンは低域の再現力において不利と言われているが、EQ700と同様にこのEW9においても全く不満は無く、E
W9の表現力はEQ700のそれを大幅に上回っている。
このEW9の低域表現力に対して大きな不満がある方がいるならば、それは音源か再生機器のコンディションを疑うか、あるいはご自身の
低音への過剰な依存症を疑った方が良いだろう。

しかし、EQ700の時と同様に音源そのものがドンシャリなセッティングになっている場合は、それを顕著に表現してしまう部分がある。
B'zのアルバムは特にその傾向が強く、聴いていて耳が痛くなる場面があった。
基本的にロックやJポップなどにも無難に対応するが、やはりEW9の本領を発揮するのはジャズやブルース系だろう。
特にアコースティック系楽器に関しては息を呑むほどの表現力を発揮している。


【その他】
外観的には、アサダ桜材の導管が浮き出るくらいに薄く塗られた塗装処理と落ち着いたダークチェリーレッドの雰囲気が、まるでエレキギ
ターの名器中の名器であるギブソン・レスポールモデル1958年製〜1960年製のボディバックを彷彿とさせ、所有するものに悦びと満足感
を与えてくれる。
また、本体を収納するための専用ポーチも付属しているので、どこかに裸のまま放置して不意に傷をつけることも防ぐことができる。
ちなみに本体表面に金色でシルク印刷されている「Sovereign」(ソブリン)とは"君主,統治者,国王"とか、"最高の,至上の,最大限の"
という意味である。



↑これがギブソン・レスポール1959モデル(リイシュー版)のボディバック。
 質感がEW9のそれとよく似ている。



↑EW9に付属されている専用ポーチ
ちなみにiPod nano(5th)本体を一緒に収めることも出来る。


装着感に関しては、プラ製のイヤフックのEQ700に対してEW9にはゴム製のクッションが付いている為、耳への負荷が上手に分散されて
違和感は殆ど感じない。

コードについては、本体から伸びているのは60センチの長さになっており、必要に応じてコードを延長できるように1メートルの延長コードが付属
されている。
ちなみに本体に直結しているコードのミニプラグはストレートタイプで、延長コード先端のミニプラグはL型となっている。
また、EQ700のようにコードを本体内に巻き取る機能は無い。



↑本体直結の60cmコードと1m延長コードが付属する。


【最後に・・・】
購入検討当初は、古いモデルということで果たして現行モデルとどれだけの音質差があるのだろうかという不安があった。
しかし、実質的にオーディオテクニカの現行耳かけ式モデルでは2番手グレードにあたるEQ700とは大きく差を開けるほどの違いがあり、一度
EW9の音を体験してしまうとEQ700には後戻りができなくなってしまうほどの魅力を備えていた。
今となっては、EQ700よりも音が良いのか?という疑問を抱いていた自分に対し「お前はアホか?」と言いたいくらいである(苦笑)

実売価格においてもネット通販などでは13,000円台から入手できるようなので、決して手の届かない価格帯ではないと思う。
本来ならばヘッドホンという無機質な道具に対して工芸品的な要素を付加することにより、音質面だけではなく外観からも所有する悦びを与え
てくれるEW9。
耳かけ式ヘッドホンを愛用している方であるならば、EW9は是非とも手に入れて後悔はしない逸品だと思う。
(記:2009年11月17日)


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