レンズ交換式アドバンストカメラ Nikon 1 J1





<Photo :とんかつサンド>            


【フルHD動画撮影に対応したデジカメを求めて・・・】
音と映像に関する様々なデジタル機器が揃う我が家(?)にも、これまで長らく無かったものがある。
それが、フルHD動画撮影機器だ。(但し、iPhone 4sはフルHD動画撮影機器としては除外)
デジタルカメラに関しては、この10年間において3台のコンデジと8台のデジタル一眼レフを買い続けてきた。
ところがビデオカメラに関しては、17年以上前に購入したDV方式(ミニDVテープ)のハンディカムを最後に、一切購入していない。

デジタル一眼レフによる高画質な画像に慣れてしまうと、どうしても今どき流行の、小型のセンサーを無理やり高感度側にチューニングさせたことに
よる無理のある画質に納得が出来ないのだ。
しかし最近になり、仕事とプライベートの双方において、ビデオ撮影による動画データをPCに取り込むことを必要とする機会が増え、いよいよ真剣に
フルHD動画機器の購入を検討する事になった。

僕の機種選択の条件は普通と違い、ちょっと特殊なものだ。

・三脚固定での撮影が基本となるため、手振れ防止機能には拘らない
・せいぜい2メートル以内にある被写体での撮影となるため、望遠性能も問わない
・一度に長時間の動画撮影は行わず、せいぜい連続で5分間程度も撮影できればOK
・画質は最優先、予算は10万円程度までなら可
・MF(マニュアルフォーカス)を多用するため、MF時の操作性も重要
・動画はカメラ本体のみによって2chステレオ以上の音声録音に対応していること
・できれば静止画もキレイな方がベター(静止画はデジタル一眼レフがあるため、最優先項目ではない)

上記の普通とはちょっと異なる我がままな要求に対し、ビデオカメラは勿論、フルHD動画撮影機能のあるコンデジから一眼レフカメラまで、徹底的にリサ
ーチを行った。

低価格でありながら動画機能の評判が良い製品として、SONYのサイバーショット DSC-HX30Vがある。
しかし、こいつは動画撮影モード時のMF(マニュアルフォーカス)設定ができず、AF(オートフォーカス)専用となってしまうためNG。

続いてNIKONのDXフォーマット一眼レフカメラ D3200であるが、こちらは本体のみではモノラル音声でしか記録されない。
また、オートフォーカス撮影時のAF作動音が大きく、静かなシーンでは「シャコシャコ・・・」という動作音が気になった。

そしてビデオカメラに関しては、SONYのHDR-PJ760V/CX720/PJ(CX)590などや、キヤノンのiVIS HF G10あたりの人気が高い。
しかし、SONYの590シリーズはMF時の操作性がいまひとつで、760/720については明らかに手振れ補正機構にかなりのコストが掛けられており、また
新方式の手振れ補正機構の耐久性にも若干の不安が残る。
また、キヤノン機も含め、どうもこのあたりのビデオカメラの画質にはいまだに納得が出来ない。


【J1はレンズ交換ができるコンデジ?】
そんな僕のわがままな要求に対し、とても低価格でありながら見事に応えてくれる製品がニコン J1であった。
このニコンJ1は、ちょうどコンデジと一眼レフの中間に位置するもので、ある意味コンデジと一眼レフの美味しい部分を合体させたようなカメラだ。
本機のことを「レンズが交換できるコンデジ」と例える人もいるが、僕としてはどちらかというと、限りなく一眼レフカメラ側に近い製品だと感じた。
レンズが交換できるのは勿論であるが、撮影に関する調整項目がニコンのデジタル一眼レフのエントリークラス機並みに豊富であり、その殆どがメニュー
ごしの操作とはなるものの、特に急を要することがなければ、他社製のコンデジとは一線を画すカスタム性を誇る。
特に画像の色合いを決定するピクチャーコントロールに関しては、付属のCDからPCにインストールするアプリ、ViewNX2を利用する事により、自分の好
みの設定を作ることも可能。
カスタム設定をカメラ内のメニュー項目に追加する事も可能であり、このあたりのカスタマイズ性についてはニコンデジタル一眼レフシリーズと同じだ。
また、撮影時のデータはあくまでも生データとし、後から自在に絵作り設定を調整する事ができるRAWモード撮影に対応している点もうれしい。

しかし、本機の操作方法において、既存のニコンデジタル一眼レフシリーズとは大きく異なる点がひとつある。
それはピント調整をマニュアルで行なう場合、その調整はレンズにあるフォーカスリングを回すというものではなく、本体の背面に装備されているロータリー
マルチセレクターを回して操作する点だ。
この調整方法を初めて知ったときは戸惑いを隠せなかったが、慣れてしまえばそれほど違和感の無い軽快なMF調整が可能となった。

また、このJ1にはビューファインダーが無いため、撮影スタイルとしては一眼レフの場合で言うところのライブビュー撮影に限定される。

レンズキットに付属している標準ズームレンズ「1 NIKKOR VR 10-30mm f/3.5-5.6」は35mm換算で27-80mmに相当し、なかなか切れのある良好な画質
を写し出してくれるレンズであり、静止画用としてはそこそこ優れた手振れ補正の効果も発揮する。



↑本体の背面に装備されているロータリーマルチセレクター。
 慣れればスピーディで正確な操作も可能


最近のMF機能が付いたコンデジやビデオカメラ等にてMF調整を行う場合、モニター上に表示される望遠/ワイドの調整アイコンを「プッ、プッ、プッ、、、」
とタップして調整するものも多い。
しかし、僕の場合はこの方式ではタップが反応しにくい事も多く、イラつかされることがあった。
その点、本機の場合はロータリーマルチセレクターをグリグリと回す方法なので、実に確実で軽快なMF操作が可能だ。
また、遠景時には拡大表示されるため、ピントの山も掴み易い。
ちなみにAFポイントは9×14の126点もあり、D3顔負けの測距点数を誇る。

それと、撮影に関する各種設定が静止画モードと動画モードとで独立している点も嬉しいポイントだ。

一方、操作系で気になったのは、メインスイッチがボディ上面と完全に一体面のフラッシュサーフェス構造になっており、またそのスペースも小さい為にと
ても押しにくい。
また、スイッチの外観や形状からはON/OFFの状態が判別できず、背面モニターも消えている状態では本体上面にある小さなLEDの点滅からメイン電源
のON/OFFを判断しなくてはならない。
デザイン上、ボディ表面の出っ張りを無くしたかったからだと思うが、メインスイッチはもう少し何とかして欲しかった。

それと上にも書いたように、このJ1にはビューファインダーが無いため、強い日差しがモニター面を直射する状況ではモニター内の映像が見え難くなってし
まい、撮影時の被写体の細かいディテールが把握し難くなってしまう。
このような状況下での撮影が多い方は、ビューファインダーを装備しているV1を選択した方が良いだろう。



↑レリーズボタンと動画撮影用ボタンは独立している。
 その奥に見えるのがメインスイッチ。


【静止画モードの画質について】
肝心の画質についてであるが、工場出荷時状態での発色については一般受けを狙ったのであろうか?日頃D3を使用している僕からすると全体的に彩
度とコントラストが強めに設定されていると感じた。
しかし上にも書いたように、画質設定には大変多くの調整項目があるため、自分好みの設定を煮詰める事により、自然な発色にする事も可能だ。

コンデジなどの画像を等倍鑑賞した場合、まるで油絵のように色つぶれしてしまう製品が多いのだが、さすがに1インチセンサーを採用している本機では、
そのような症状は見られなかった。
全体的にはコンデジ達とはワンランク上を行く、ヌケの良いキレのある画質であると思う。

しかし、コンデジクラスよりは高画質とはいえ、やはり本格的な一眼レフカメラで採用されているフルサイズセンサーやAPSサイズセンサー機と比較した場
合、ダイナミックレンジの広さやシャドー部のノイズの出方などの点で及ばず、何となく一昔前の一眼レフカメラであるニコンD2Hっぽい雰囲気を感じた。

ちなみに、右記のレビューページに使用している画像は全てJ1によって撮影したものだ。→こちら

この静止画モードについては僕の下手なレビューや画像なんかよりも、マップカメラにて執筆されているレビューの中に僕の感じた事の全てがそのまま書
き綴られている。→こちら
(レビュー機はV1であるが、画質についてはJ1も同じ。)


↑奥に見える長方形のパーツが1インチサイズのセンサー。





【動画撮影モードについて】
静止画モードについては、(このクラスのカメラとしては)充分納得のいくクオリティであるが、こいつの凄いところは動画の画質も素晴らしい点だ。
(この点が本機の購入を決定づけたポイントでもある。)
家庭用のビデオカメラの撮像素子には、概ね1/5型〜1/2.9型あたりのサイズのものが採用されている。
しかし、このJ1にはそれらよりもはるかに大きな1インチサイズのセンサーを搭載しているため、ビデオカメラ用のセンサーとしてはかなり大型の部類になる。
また、静止画用としても高品質なレンズ性能と相まって、J1から出力される動画の画質には思わず息を呑むものがある。
ハンディカムの場合は1枚のベールを被せたような緩い画質が気になっていたのだが、このJ1による画質は抜けの良いクリアーなものだ。

但し、動画撮影専用機ではない性質上、一般的なビデオカメラに比べて至らない点も数多く存在する。
まず、動画の撮影時間に制限があり、撮影開始ボタン一回押しにつき20分までとなっていること。
これは関税対策と、センサーの温度上昇によるトラブル回避などの理由により設定されているようだ。

次に、動画撮影用としては、現行型のビデオカメラと比べて手振れ補正の効きが弱い事。
レンズキットに付属の標準ズームレンズ「1 NIKKOR VR 10-30mm f/3.5-5.6」にはVR(手振れ補正)機能が備わっており、上にも書いたように静止画用と
してはそこそこ優秀な手振れ補正効果を発揮する。
しかし、動画撮影用の手振れ補正としてみた場合、最近のビデオカメラのように、歩行中や車載カメラのようにダッシュボード等に固定させたまま(クルマが
振動している状態)の撮影であっても画面の揺れを吸収するという性質の手振れ補正ではない。
このVR 10-30mmの場合、撮影者は必死にカメラを(手持ちのまま)固定させているつもりでも、実はプルプルと細かく震えている程度の揺れを吸収させる
タイプの補正だ。

また、ズーム操作も当然ではあるが手動となるため、ハンディカムのようなスムーズなズーミングを行なうにはコツを要する。
ただし、他のニコン一眼レフによる動画撮影のように、オートフォーカス時の作動音(シャコ、シャコ・・・)が気になるようなことが無かった点は素晴らしい。

【最後に・・・・】
最近ではV1/J1の後継機種(上位機種?)の発表が噂されているようだが、これだけの最新テクノロジーと機能と性能でありながら、レンズキットが3万円でお
釣りが来る販売価格(2012年8月現在)というのは驚異的なコストパフォーマンスだ。(発売開始当初は7万円もしたようだが、、、。)
(記:2012年8月7日)





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