メイキング・オブ・ マスターグレード


「ギターグラフィックVol.8」に、マスターグレ−ドのギターが板材から完成するまでの工程が
14ページに渡って詳しく紹介されていたので、掻い摘んで説明致します。


1.ボディの切出し
四角い板材にエンピツにて大まかに描かれたボディラインに沿って、バンドソーを用いてラフカットする。

2.ボディ外周の成型
切出したボディにテンプレートをネジ止めし、ルーターマシン(勿論、自動制御ではない)を使い、
手作業にてボディ外周を正確に切出し、成型する。これはビンテージと同じ手法で、プレートを固定する為についた
ネジ跡はダボによって埋められる。

3.各種キャビティ開け
ネック、ピックアップ、コントロール、トレモロ、他、各種のザグリを先ほどと同じ機械、手法で
開けていく。

4.ボディ面取り
アールのついたカッターを使い、手作業にてボディの面取りをする。

5.コンター成型
ストラトの場合、裏面にテンプレートをあてて、ラインを描き、なんとボディを手で抱えて、バンドソーで
斜めにカットする。前面の肘があたる部分も同様にカットし、ベルトサンダーにて粗仕上げを施し、
続いてエアバッグ・サンダーを使い、成型する。この段階でほぼ、ストラトのボディ外形が出来あがった。

6.各種穴開け
トレモロ取り付け穴、各種コードを通す為の穴等をハンドドリルを使い、開けられる。

7.最終加工
ボディ平面部にサンダーを掛け、凹凸を無くす。また、フリーハンドにて微妙なラインが修正される。


以上がボディ木工に関する工程。その工程中に自動制御の工作機械は全く登場しない。
続いてネックの加工です。


8.材のチェック
まず、長方形に切出された板材をチェックしていく。曲がりの酷いものは排除される。
次に材をタッピング(叩いて)して、質をチェックする。そして杢の出方をチェック。マスターグレード
に相応しい材のみを使用する。

9.切出し準備
テンプレートをあてて、木目と木取りの方向を吟味する。

10.トラスロッドの仕込み
まず、ルーターによって溝を切る。そしてハンドドリルを用いて調節口の穴を開ける。

11.トラスロッドの埋め込み
外形カットの前にトラスロッドを埋めこむ。クランプを使い、接着剤が固まるまで固定する。
マスターグレードの指板材(ローズ指板)にはアフリカン・ローズが使用される。

12.ネックの切出し・荒成型
ボディと同様にネックを切出し、大きなアールのついたカッターが付いたルーターにて成型する。

13.フレット溝切り
振り子式のアームにネックをセットし、フレットの間隔で並んでいる回転ノコ刃の上を
スライドさせてフレットの溝を切る。

14.ポジションマークの接着
穴に接着剤を埋め、ドットマーカーを埋め込んでいく。

15.ネックの最終成型
マスターグレードシリーズの場合、ネック・プロフィール仕上げは全てハーバート・ガステラム氏が一人で行
っています。氏は60年代からネックを手掛けており、グリップ部は勿論、ヘッドやヒールにかけての曲線や
指板端部の処理にもとことん拘っており、当時に養ったノウハウを余す事無く、マスターグレードのネック一
本、一本に注ぎ込んでいます。

16.フレットのサンディング
金属プレートを指板の上から被せ、フレットを磨き上げます。その後フレットにバフがけをします。

以上がネックの木工加工です。やはり、コンピューター制御の機械は登場しません。


17.ピックアップ
続いてピックアップの工程と行きたい所ですが、かなり複雑な工程なので、ポイントのみ解説致します。
まず、マスグレPUのワインディングを行っているのは、50年代後半からワインディングを手掛けてきた
アビゲイル・イバラ女史です。彼女のピックアップに関する拘りは恐ろしいくらいで、まず、ワイヤー
に関して、納品されたロールから一個だけ巻いてみて、そのコイルの抵抗値を計測します。
それは同じ規格で納品されたワイヤーであっても、ロールごとに微妙に抵抗値が異なる為です。
そのばらつきに合わせて、巻き方を変えているのだそうです。また、各年代の特徴を表現する為に
巻き数、巻きスピード、テンション、横方向の送りピッチ等を微調整しているとの事。


18.塗装・組み付け
そして塗装にはニトロセルロースを採用。サンバースト系の場合、アルダー材をブリーチ(脱色)してから
まずはイエロー塗装、続いてシーラー、バースト層着色、トップコート、乾燥、中間研磨、最終トップコート
を経て、約2週間程乾燥させた後、水研ぎ、バフがけで艶だしを行う。

そしてネックとボディのはめ合いを調整しながら組み込み、各パーツを取り付けて完成。

以上、写真が全く有りませんでしたが、解かりましたでしょうか?
驚いたのは全くコンピューター制御の機械が登場しない事。僕自身、ピックアップキャビティくらいは
NCルーターを使っているものだと思っていましたが、写真では、ボディを両手で押さえてルーターマシンにて
手動で動かしながら切出しています。(勿論、テンプレートは使っていますが)
ちなみにフェンダーUSAでもレギュラー工場では、コンピューター制御のルーターを使い、1台のマシンで
同時に8枚のボディと8本のネックを加工しています。
具体的な生産数で述べますと、レギュラー工場では1日に425本のギターを製造し、バハ・カリフォルニア
で組む為のボディ&ネックを600本作っているのに対し、カスタムショップでは1日に約29本と圧倒的に
少ない。(マスターグレードだけではなく、全てのギターの合計です。)
いや〜、マスグレって本当に手間が掛かっているんですね〜(笑)

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