マーシャル ギターアンプ キャビネット1960AX & 1960A

Marshall 1960AX 100W & 1960A 300W 4×12 Guitar Extension Cabinet





       


【外観と名前は似ているが、中身は全くの別物】
世界中のロックシーンにおいて、マーシャルの1960シリーズのスピーカーキャビネットほど多くの人達が目にしているギターアンプキャビネットはないだろう。
1960シリーズはマーシャルを代表するスピーカーキャビネットであるばかりか、ロックに使われるギターキャビネットそのものの代表と言っても言い過ぎではない。

1960キャビネットには、キャビネット前面にアングルが付いた「1960A」と、フラットな形状をした「1960B」がある。
アングルが付いた「1960A」は、アンプヘッドをキャビネット上に乗せた際に、横から見てヘッドとの設置部分が同じ幅になることで、デザイン面をスッキリとさせるために設計されたものである。
しかし、60年代当時ではフラットな形状のキャビネットが当たり前であったことから、このアングル部分について、あるミュージシャンから質問をされたジム・マーシャルは
横幅を合わせるためとは言えずに、上の二つのスピーカーが斜め上を向くことにより、遠くの観客にも音が届くためのデザインだと、つい答えてしまった(苦笑)
しかしその後、ジム本人によって実際にそのような効果が確認できたという逸話がある。

上記の音響的効果の信憑性については不明だが、一般的には「1960A」に対して「1960B」の方がエンクロージャーの容積が大きいため、低域が強調されると言われており
実際、「1960A」ではなく、「1960B」の上面にアンプヘッドを設置して使用するミュージシャンも多い。

しかし、僕の場合は見た目的に「1960A」との組み合わせが好みであることと、ソファーや椅子に座ってギターを弾いた場合に、バッフルに角度が付いた「1960A」の方が音がダイレクトに耳に届くため、
「1960A」の方が使い易いと感じている。

「1960A」と「1960B」の違いについては前途の通りだが、同じ「1960A」の中にもモダーン系とヴィンテージ系とに別れており、モダーン系の代表が「1960A」であり、ヴィンテージ系の代表が「1960AX」となる。
(実際には更に「AV」「AHW」「DMA」などもあるが、この場では割愛)

前者の「1960A」は主にJCM800シリーズ以降のモダーン系のヘッドに合わせるようにデザインされており、「1960AX」は1959SLPや1987Xなどのヴィンテージモデルのヘッドに合うようにデザインされている。
それは外観だけではなく、サウンド面においても、それぞれのサウンドコンセプトに合うように、専用のスピーカーがチョイスされている。

これら「1960A」と「1960AX」のトーンの特徴に関して、マーシャルのオフィシャルサイトでは以下のように表現されている。

・「1960A」 (搭載スピーカー:SELESTION G12 T-75)
 高音と低音が際立った幾分モダンなドンシャリ系なサウンドが特徴。

・「1960AX」 (搭載スピーカー:SELESTION G12 M-25 Greenback)
 レスポンスが早く、粘っこい中域とワイルドな高域が特徴。





僕の場合、98年頃に初めてJCM2000 DSL100を購入した時に、同時に購入したJCM900版の1960Aと、その後に購入した2代目1960A(LEAD)しか使った事が無い。
どちらも同じ「1960A」なのだが、これは勿論、モダーン系アンプのDSL100に合わせてチョイスしたからだ。
ところが、後からヴィンテージ系ヘッドの1959SLPを購入したのだが、設置スペースの都合もあり、キャビネットはそのまま「1960A」を流用していた。
しかし、日が経つにつれて、やはり「1960AX」と組み合わせたくなり、我慢できずに「1960AX」を買い増ししてしまった(苦笑)

僕は、これまで厳密に「1960A」と「1960AX」を弾き比べた事は無く、それ程大きな差は無かろうと高を括っていた。
しかし、実際に両者を並べて弾き比べてみたところ、その大きな差に愕然となった。
1959SLPを1960AXに繋ぎ、Gibson Historic Collection 1958 Les Paul Standard Reissue (2014年製)を弾き鳴らした瞬間、頭の上から水をかけられたかのような衝撃を受けた。

ブラック&グレーのチェッカーボードのフレットクロスを通して吐き出される、そのトーンは正に「Led Zeppelin」!!。
そして、ギターをレスポールからフェンダーのストラトキャスターに持ち換えると、今度は正しく「Jimi Hendrix」!!!(笑)
「おお〜〜!これだよ、これっ!!」ってな感じだ(苦笑)

しかし、ここで確認のため、アンプのセッティングはそのままに、横に置かれた1960Aに繋いで音を出してみるが、、。
一旦、1960AXでのトーンを聴いてしまった後では「これじゃない感」が大きく感じられてしまう(汗)
その、トーンの違いは正しく上に記述した、オフィシャルサイトの表現の通りだった。

もっと具体的に説明すると、「AX」の方が、中域から高域にかけての音の歪み成分がダイレクトかつワイルドに出力されているのに対し、「A」の方では「AX」と比べて若干歪み成分がマスクされている印象。
言い方を変えると、全く同じアンプセッティングの場合に「AX」よりも「A」の方がディストーションの掛かり方が甘く感じられる。
その代り、「AX」よりも「A」の方が低域成分が豊かであり、ラウド感が強く感じられる。

また、「A」の方ではトーンの全体的にコンプレッションされた感があることからピッキングのムラが出にくく、ピッキングに多少のムラがあったとしても、ある程度上手に聴こえるという感じ。
これに対して「AX」ではピッキングのムラや強弱がそのままダイレクトに出力されてしまう。
しかし、演奏の躍動感という点では、明らかに「AX」に軍配が上がる。

これらの特徴はDSL100Hヘッドと接続させた場合も同様で、「AX」と組み合わせることにより、まるで優等生の良い子ちゃんが、突然ワイルドな不良に変身したような一面を見せてくれるようになる。
場合によっては、これが若干暴れすぎな印象になってしまう可能性もあるが、70年代ハードロックを演るなら断然「AX」だろう。
しかし、80年代のLAメタルなどの場合では「A」の方がベストだろう。

結論として、両者は外観こそ似てはいるものの、「1960A」は「1960AX」の代わりにはならないし、また、「1960AX」は「1960A」の代わりにはならない。
ヴィンテージシリーズである1959SLPヘッド本来の持ち味をフルに発揮させたいならば、「1960A」ではなく、絶対に「1960AX」をチョイスするべきだ。
実際に僕自身、なぜもっと早く、「1960AX」を導入しなかったのかと深く後悔した(苦笑)

(注意:「1960AX」の場合、100Wヘッドとの2段スタックの組み合わせでの大音量&長時間使用は故障の原因となるので注意が必要。)
(記:2015年11月2日)



↑こちらは1960Aのキャビネット内部。



↑1960Aには、SELESTION G12 T-75スピーカーが搭載されている。



↑こちらは1960AXのキャビネット内部。



↑1960AXには、SELESTION G12 M-25 Greenbackスピーカーが搭載されている。
ちなみにカバーには「MADE IN ENGLAND」と表示されている。


↑ネット中を探してみたところ、有りそうで無かったアングルドキャビネットの2段重ねによる3段スタック。
 (危険なので、良い子は真似しないでね(苦笑))


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