コーヒー豆の自家焙煎によるメリット





「エスプレッソ用のコーヒー豆について」のページでは、自家焙煎が様々な面においてお勧めだと書いた。
その理由をもう一度この場で具体的に整理してみよう。


【豆の保存管理が楽になる】
そもそも僕が自家焙煎に手を出した一番の理由がこれ。
焙煎豆を購入していた頃はとにかく酸化防止対策に翻弄されていた。
購入した豆は密閉度の高いビンに小分けして移し、すぐに飲まない分は冷凍保存。
そして1〜2週間程度で使いきれるものは冷蔵保存。
これが一般的には最も有効的な焙煎豆の保存方法だと言われている。
しかし、焙煎前の生豆ならば特に気を使うことなく1〜2年間の保存が可能となるため、大量購入することにより頻繁に豆店に焙煎豆を買いに行く手間を省くことができる。
そして1週間〜2週間程度で消費できる分だけを焙煎することにより、密封容器に入れておくだけで常温保存のままでも新鮮なコーヒーを飲むことが可能となる。


【豆の購入コストが大幅に安くなる】
焙煎豆の場合、いくら冷蔵・冷凍保存ができるとは言っても、保存性の問題から一回に購入できる量はせいぜい数百グラム単位でしか購入することはできないと思う。
しかし上にも書いたとおり、生豆は年単位での長期保存が可能なので、大量に一括購入することができ、結果としてグラム単価が大幅に安くなる。
たとえば自家焙煎店から焙煎豆を購入する場合、100gあたり400円〜600円くらいが一般的な相場になると思う。
しかし生豆をキログラム単位で購入すると、購入ルートによっては100gあたり40円くらいから購入することが可能となるので、かなりお得になる。

それでは金額的にどれほどの差が発生するものなのか、実際に計算してみよう。

例として、1日に3杯のコーヒーを飲む為に、一杯につき10ク゛ラムのコーヒー豆(粉)を消費した場合の1年間の金額差を求めるとした場合。
尚、既製品は100ク゛ラムで400円、生豆は100ク゛ラムで40円とします。

10g×3杯=30g/日×365日=10,950g(約11kg)←1年間に必要な豆量

既製品の年間の豆代は109.5×400円=43,800円/年

生豆の場合、焙煎による水分蒸発や不良豆除去などの目減り率を仮に20%とした場合、必要な重さは13,140g(約13.1kg)
生豆の年間の豆代は131.4×40円=5,256円/年

差額は43,800円−5,256円=38,544円/年

上記の差額となる。

ちなみに自家焙煎店から豆を購入する場合、多くは生豆の重さで精算し、そこから焙煎を行うので実際には15%程目減りしている。
例えば300gの生豆を購入して焙煎してもらった場合、実際には255gほどになっている。
従って上記の既製豆が自家焙煎店からの購入の場合は、更に金額差が開くことになる。(年間の豆代=50,600円)


↑写真の生豆(コロンビア・スプレモ)は2kgあるが、購入単価はなんと400円/kgである。
 (上記の単価は2008年9月時点のものであり、実際の価格は常時変動しています。)


【自分好みの焙煎具合に仕上げることができる】
近所に自家焙煎豆店が無く、既製の焙煎済みの豆しか購入できない人にとってはこれが結構切実な問題だったりする。
特にエスプレッソ用の場合は、最も煎りの深いイタリアンローストに設定されていることが多い。
例えば某全国チェーンのコーヒー豆販売店には29種類の商品(焙煎済み豆)ラインナップがあるが、その中に僕のお気に入りのフルシティローストで焙煎された商品は1種
類しか存在しない。
また、注文を受けてから焙煎をするショップの豆についても、店ごとに焙煎度合いの定義にバラつきがある為に自分の求めていた焙煎度と異なる場合も少なくない。
つまり自分が想像していたフルシティローストが、店によってはフレンチであったりシティであったりと±1段程度のズレが生じてしまう事がある。
しかし自分で焙煎をすることにより、焙煎度の呼び方とは無関係に好きな度合いで煎る事が可能となる。




【安全・安心・新鮮で美味しい焙煎豆ができる】
全国チェーン系の豆店は勿論、オーダーを受けてから焙煎をする自家焙煎店の殆どが、生豆の山から不良豆を取り除くハンドピック作業は行なわれずにそのまま焙煎され
て引き渡される。
ところが実際に自分でハンドピックをやってみると気がつくのだが、豆の種類やロットによっては結構な割合で不良豆が混ざっている。
不良豆の中でも特に気になるのが、虫食い穴から鮮やかなエメラルドグリーン色をしたカビが発生している豆が見つかったりする。
また、不良豆以外でも麻袋の繊維や、何かの動物の毛のようなものや小石が混ざっている場合もある。
これらを全く除去せずに焙煎し、そのまま挽いて抽出し、、、。
ちょっと考えただけでも恐怖である。(不良豆の割合は、一般的に3%〜10%程度と言われている。)

それ以外では、自家焙煎店以外の全国チェーンの豆店や大手メーカーの商品の場合、焙煎した日が不明なのが殆どであり、焙煎後1ヶ月から場合によっては半年以上経
過したものが店頭に並んでいることも珍しくない。
しかし自家焙煎ならば常に炒りたてである。
焙煎直後に抽出をした場合はクレマも立たず味もぼやけた感じになってしまうが、最低でも2〜3日寝かせた後に抽出をすると今まで自分が飲んでいたものは何だったのか?
と驚かされることは間違いないと思う。
気温や湿度、焙煎加減や焙煎方法などで違いはあるが、焙煎から7日〜10日目くらいまでは甘みやコクが増幅し、クレマも異常なほどに発生する。



↑上の抽出中の写真を見て欲しい。
 なんと底の2ミリ程度の黒い部分だけがエスプレッソ液で、そこから上の茶色い部分は全てクレマなのだ!



↑30ccの抽出完了。クレマが60ccラインにまで届くほど、たっぷりと立っています。


【自家焙煎って難しいの??】
「簡単だよ!」なんて軽々しく書いてしまうとプロの焙煎士さんに怒られてしまいそうだが、コツさえ掴めば誰でも美味しいコーヒー豆を焙煎することができる。
家庭で行う焙煎には様々な方法があるが、それぞれにメリット、デメリットがあるため、一概にどれがベストとは言いがたい。
お金が掛からずに失敗の率も低いことでは、赤ちゃん用の粉ミルクの空き缶を利用した「ミルク缶焙煎」の評判が良い。
この方法に関しては諸先輩方のサイトやブログ等に山ほど詳しく紹介されているので、興味のある方はググってみてほしい。

ちなみに僕はケトルクッカーというアウトドア用品を使って手焙煎していた。
これは胴の深い鍋で、取っ手のつけ方によってはヤカンにもなる優れもので、胴が深いのでチャフも飛び散りにくく、豆も攪拌しやすい。
ただし若干重みがあるので、約20分もの間止めることなく左右に振り続けるのは結構しんどい。
ということで、多少の出費は構わないからラクに安定した焙煎を得たい、と言う方には電動式の焙煎機がお勧め。
かくいう僕もついに電動式の焙煎機を導入してしまった。

さて、現在焙煎済みの高価な豆を購入し、必死になって豆の劣化と戦っているあなた。
自家焙煎の世界へ一歩足を踏み入れてみてはいかがでしょうか?

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