クルーズマニアックサウンド ヴィンテージライン EX-MAGIC with K&T "VALVE VAMPER"

Crews Maniac Sound VINTAGE LINE EX-MAGIC with K&T "VALVE VAMPER"






<写真・文 :とんかつサンド>



【探し求めていた仕様のコリーナ・エクスプローラーをやっと入手】
 今回紹介するのは、「Crews Maniac Sound(クルーズマニアックサウンド・以下、クルーズ)」という国内ブランドから発売されていたコリーナ・エクスプローラー・モデル。
クルーズが運営する渋谷の楽器店「フーチーズ」にて新品購入。(メーカー価格:483,840円 税込)

エクスプローラー・モデルは兼ねてからずっと欲しかったモデルであったのだが、このモデルにはちょっとした拘りがあり
大手メーカーからは納得のいく仕様で製作される事が殆ど無かった事から、これまで入手する事ができていなかった。
唯一納得のいく仕様の製品としては、本家ギブソン・カスタムショップからオリジナルの製造年(1958年)の"〜十周年アニバーサリーモデル"として、
西暦の一桁年に"8"のつく年にごくわずかな本数のリイッシューモデルがリリースされる程度。
しかも、かなりの高額品でありながらも、世に出る頃には既に買い手が決まっているという状況。

今年(2018年)は、1958年にオリジナルのコリーナ・エクスプローラー(フライングVも)が発売されてから60周年目にあたる年なので、
本来ならば、これらのリイッシューモデルが発売されると思われていた。
しかし、現在のギブソンはそんな事を計画できるような余裕など無いであろうと思われるほど厳しい状況だ(苦笑)。
という事で、今回、本家ギブソンからコリーナ・エクスプローラーモデルがリリースされる可能性はぽぼゼロだと思われる。(2018年NAMMショーも不参加だったですし、、、。)

一方、国内ブランドでは、過去にBacchus(バッカス)やmomose(モモセ)からもコリーナ・エクスプローラー・モデルが発売されており、この1年間にも数本の中古個体が流通していた。
(2018年5月現在、Bacchus(バッカス)ではラインナップに含まれておらず、momose(モモセ)では受注(予約)生産扱いとなっている。)
しかし、この両ブランドからリリースされていたモデル(この両モデル、どちらも松本市にある飛鳥工場にて製作されており、ボディピース以外は実質的に同じもの)には、
どうしても妥協する事ができないポイントがあった。

一つ目は、ネックジョイントのヒール部とボディバック面との接合部に、まるでレスポール・スタンダードのような段差があるところ。
オリジナルの1958年製エクスプローラーには段差が無くフラットになっている。
些細な事だと思われるかもしれないが、このネックジョイント部分はエクスプローラーのデザインの一部として、とても重要なポイントだと感じている。

そして二つ目が、ボディに使用されているコリーナ材が2ピースや3ピース構造になっている点は仕方がないとして
杢目や色合いが微妙に(個体によって大きく)異なる材が接合されている事が多く、見た目に「いかにも接合されてます」感が出てしまっているところ。

これら2点が外観的にどうしても妥協することができず、これまで購入に至っていなかった。
そんな中、上記のポイントを見事にクリアしているエクスプローラーが、今回入手したCrews Maniac Sound VINTAGE LINE EX-MAGICというわけだ。

 このEX-MAGIC、正規に国内市場で流通しているエクスプローラー・モデルとしては、おそらく最も贅沢な仕様で製作されたエクスプローラー・モデルだと思う。
そもそも、クルーズが製作するギターは、どれも異常なくらいに拘りに拘り抜いた木材やパーツをチョイスし、高度な技術を持ったクラフトマンによって製作されているのだが
とりわけ、このエクスプローラーは拘りを極めた一本になっている。
もしも、このギターがGibson社からリリースされていたとしたら、国内での販売価格は軽く100万円を超えてしまうだろう。







 このモデルの凄さについて、「デジマートマガジン」にて、楽器・機材レビューの的確さは当代随一との評価が高い、村田善行(むらた・よしゆき) 氏にお話を伺った。
(私がフーチ−ズを訪れた当日、フーチーズのスタッフとして出勤されていた村田氏と、運良くお話をさせて頂くことができた。)

まず、ボディ材には当然ながらコリーナが使用されているのだが、コーリナ材の中でも更に色と杢目と重量に拘り、このモデルに相応しい品質のコリーナ材をチョイス。
ボディ材としてはセンター2ピース構造になるのだが、前面と後面から見る限りでは接合部分が全く判らず、ボディ下側(ストラップピン側)から見て、やっと接合されて
いる事が認識できるレベル。


ボディバックを見ても、センター2ピース構造であることが全く認識できない。


ネックジョイント部はボディバックとフラットになっている。


そして、フィンガーボードには最上級グレードのブラジリアン・ローズを使用。
一口にブラジリアン・ローズとは言っても、近年では調達することが極めて困難な、色目の濃いものが選定されている。

購入前にEX-MAGICについて色々と調査をしていた時、黒々とした見事な色目のフィンガーボードをネットのサンプル画像にて初めて見た僕は、
これはもしや染めてあるのでは?という疑念を抱いていた。
がしかし、村田氏によると、クルーズでは指板への着色を一切行っておらず、このモデルにはブラジリアンの中でもとりわけ上質で希少な材を選定していると言う。

これらの貴重な木材をクルーズ社が長野県松本市にある工房へ持ち込み、製作されるのだが、この工場というのが実は上にも書かれている、Bacchus(バッカス)やmomose(モモセ)のギター
を製作しているディバイザーの飛鳥工場だ。
そのため、この「Crews Maniac Sound VINTAGE LINE EX-MAGIC」は、Bacchus(バッカス)やmomose(モモセ)のコリーナ・エクスプローラー(実売12万円〜20万円)と、使用
されているコリーナ材も含め、本体部分は同じものではないのか?という問い合わせが多かったそうだ(苦笑)

しかし、実際にこのギターを製作するにあたり、クルーズ社の代表である吉岡喜久夫氏の指導・監修により、その技術を認められた数人のクラフトマンからなる特別な製作チームにより、オールハンドメイドで製作されている。
冒頭に私がBacchus(バッカス)やmomose(モモセ)から発売されていたEXモデルに対する不満点として挙げたネックジョイントやボディ材接合に関しても、EX-MAGICではクリアされているのは
35年以上に渡る豊富な経験、知識を有するCrews吉岡氏による拘り抜いた監修・指導が行われているからだ。
Bacchus(バッカス)やmomose(モモセ)製品との共通点とは、「同じ工場の敷地内で製作されている」という点だけであり、使用木材は勿論、製作プロセスも全く別ものだと言う。

最後に、このEX-MAGICに搭載されているピックアップ(K&T PICK UP)がこれまた凄い。
このEX-MAGICには “K&T VALVE VAMPER”という、PAFをルーツとしたハンド・ワインディング・ピックアップが搭載されている。
(ピックアップだけで1セット152,229円!!)

このピックアップを製作しているのは、エリック・クラプトンやジェフ・ベックをはじめとする数多くの海外著名ギタリスト達のヴィンテージギター、ピックアップの巻き直しリペアと
ヴィンテージ・ギターの修理経験を経た後、大手ギター・メーカーのヴィンテージ・モデルの開発や、ヴィンテージ楽器に関する書籍の執筆/監修なども行っている高野順氏。
80年代にエレキギターにハマっていた方であれば、1980年代初頭にGRECOの上位モデルに搭載され、現在では世界中で"幻のピックアップ"と絶賛されている"Z-DRY"ピ
ックアップを世に生み出した人物と説明した方が解りやすいだろうか?
この高野氏が電動のワインディングマシンではなく、自作の手動ワインディング・マシンを使い、完全な手作業によって製作されているピックアップである。

生産効率とコストを重視する大手メーカー製の量産ピックアップの場合、ボビン1本を高速巻線機によって約50秒程度で巻き上げられる。
これに対して高野氏の場合、長年の検証データに基づき、1ボビンを1000回転ごとにコイルの巻くパターンとテンションを変えながら2時間もの時間かけて、完全な手巻き作業
によって巻き上げていく。
高野氏一人による完全な手作りの為、生産数としては1日に1セットペースでしか製作する事ができないとの事。

このK&Tピックアップは海外のギターマニア達にもその存在が知られており、「The Les Paul Forum.com」でも度々話題に上がっている。
また、実際に使用しているユーザーからは「こいつは凄いピックアップだ!」と絶賛されている。

このEX-MAGIC、生産本数としては2014年に合計6本のみが製作されただけであり、その後はこのモデルに相応しい品質の木材(コリーナ&ブラジリアンローズ)を調達する事が出来ない事を理由に
当記事を書いている2018年5月2日現在までに一切製作されていない。 (村田氏によると、モデルとして決して廃版になった訳ではないとのこと。)

僕の調査によると、既に売却済みとなっている全4本のうちの2本が中古品として販売された記録があり(某S楽器店と、某nnギターズ)、そのうちの1本はなんと現在中国へ渡っていることが確認できている。
(正に、この記事を書いている18年5月2日現時点において、中国国内向けのネットオークションに出品されている最中であった。)

そして、私が購入した1本を含めて現時点で全製作数6本のうちの5本が売却済みとなっているのだが、実は最後の1本については秘蔵品としてフーチーズの倉庫に保管されているのだという。
(2018/12/21追記→なんと、最後の1本が12月17日に販売開始されたようだ。)


EX-MAGICに搭載されているK&T VALVE VAMPERピックアップ。
背後には、色が濃く目の詰まった極上のブラジリアンローズ材が見える。


K&T VALVE VAMPERピックアップ。


コントロールキャビティ内部


とりあえずロッドカバーをGibson Custom Shopのものへ変更した。
それにしてもこのヘッドロゴ、数年前に初めて目にした時には違和感を抱いたものだが
今では、拘りを極めた名器の証しとして誇らしく感じている(笑)


 国内市場に存在する最後のEX-MAGICをフーチーズの店内で試奏した瞬間、全身に鳥肌が立った。
あらためてこのギターが只モノではない事がすぐさま実感することができた。

出てくる音がとにかくセクシーで色っぽい。
この感覚、以前に感じた事があると思ったのが、私が以前所有していたGibsonカスタムショップのES335(61年モデル)にも似ていると感じた。
これは正しく、村田氏がこのギターの説明に書かれている「ソリッドギターでありながら、まるでセミアコの様な鳴り感が感じられます。」そのものであった。
また、K&Tピックアップが素晴らしく、この感じは、私が所有しているGibson les Paul Standard 63年製(SG)の初期型ナンバードPAFにも似ていると感じた。
ギターの弦が発する音の微妙なニュアンスを忠実に拾い上げるため、ピッキング時の強弱差による音ムラやタッチノイズもそのまま増幅されてしまう。
つまり、上手く弾くことができれば鳥肌が立つくらい表現力をもったトーンを出力させることができるが、下手に弾けばそのまま自分の下手さが露呈してしまう
ある意味ではじゃじゃ馬な恐ろしいピックアップでもある(汗)

それでも、63年製のSGも弾いていて時間を忘れるくらいに気持ちの良い音がするのだが、このEX-MAGICも同様に時間を忘れるくらいに気持ちが良い。

このEX-MAGICは一本のギターとして想像以上に素晴らしく、良い相棒にやっと出逢えたような嬉しさに満ちている。

また、今回このEX-MAGICを購入するにあたり、フーチーズの村田氏と西村氏からとても貴重で興味深いお話しを伺う事ができ、とても有意義な時間を過ごす事ができた事に感謝したい。
(記:2018年5月2日)



クルーズが運営する渋谷の楽器店「フーチーズ」店内の様子。
画像右端に写っているお方が、デジマートマガジンで有名な村田氏だ。


店内には上質で貴重なギター用木材が展示されている。



ハイエンドなギター達が並ぶ店内。
いわゆる"お手軽価格"なギターを見つける事はできなかった(汗)。


左から2本目に見えるエクスプローラーは、エリック・クラプトンが愛用していた事で有名な
ボディ後端部が大きくカットされた、いわゆる"ECカット・エクスプローラー・モデル"だ。



引き渡し前には、リペアマンによって厳密な再メンテ&調整作業が行われる。
僕にとって納得のいくセッティングになるまで、数回の「試奏→調整」が繰り返された。
弦高に関しては、0.1ミリ単位での微調整を繰り返してベストなセッティングにして頂いた。


↑50年代当時は不人気の為に全く売れなかった “モダニスティック・シリーズ”の2機種。

(↓試奏動画)


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