【エスプレッソ用の豆とは?】
初めての方がエスプレッソマシンを購入してエスプレッソを作ろうとした場合、まず最初にぶち当たる問題が「エスプレッソマシン用の豆や粉って何を使えば良
いの?どこに売っているの?」というものだと思う。
しかし、エスプレッソ用の豆とはいっても特別な豆の品種や銘柄や加工法がある訳ではなく、基本的には一般的なドリップコーヒーなどに使われているものと
同じコーヒー豆(生豆)をベースとし、そこから焙煎をドリップ用のものよりも深煎りにしたものがエスプレッソ用の豆となり、そして挽きの粗さ(粉の大きさ)を細
かく挽いたものがエスプレッソ用の粉となる。
当ページでは、初めて自分でエスプレッソを作る為に必要なコーヒー豆に関する基本的な事について説明したい。
【コーヒー豆の銘柄について】
上記では、エスプレッソ用のコーヒー豆の種類は基本的にドリップコーヒーに使われているものと同じものであると書いた。
しかし、一概にドリップコーヒー用とは言ってもその種類は数十種類以上にも及び、全く見当もつかないという方も多いだろう。
また人の好みも多岐に渡るため、一概にどの銘柄がベストとは言い切れないが、価格や入手しやすさなどの観点から、ある程度の定番的な豆ということで
絞ると下記の豆あたりが代表的な銘柄としてあげられる。
●ブラジルサントスNo2
苦味、酸味、コクのバランスに優れ、軽い口当たりと癖の無い風味からブレンドベースとしても人気が高い。
流通量も多い事から、価格も安く最もポピュラーな銘柄といえる。
コーヒー生豆 ブラジル サントス No.2 17/18 (1kg袋)
●コロンビア・スプレモ
我々日本人にとって最も馴染みやすい豆とされており、缶コーヒーで数年間出荷数のトップに位置しているジョージア・エメラルドマウンテンや、インスタントコ
ーヒーで有名なネスカフェ・ゴールドブレンドはコロンビア豆がベースとなっている。
また、ファーストフード店が本格コーヒーとして商品化しているものも、コロンビアがベースになっていることが多い。
ブレンドベースとしても上記のブラジルと人気を2分している。
コーヒー生豆 コロンビア スプレモ(SUP) (1kg袋)
●タンザニアAA
通称キリマンジャロとも呼ばれているもので、甘い香りと酸味が特徴。
コーヒー生豆 タンザニア (キリマンジャロ)AA (1kg袋)
●モカ
フルーティーなアロマと、強い酸味が特長だが、現在では入手が困難である。
コーヒー生豆 エチオピア (モカ)シダモG2 (1kg袋)
●グァテマラ
適度な酸味と芳醇な甘みが特徴的で、ワインのようにフルーティーなアロマがあるとも言われている。
ちなみに缶コーヒーのボス・レインボーマウンテンブレンドは、このグァテマラがベースらしい。
コーヒー生豆 グアテマラ SHB (1kg袋)
●マンデリン
しっかりとした酸味と苦味、コクが特徴で、ブルーマウンテンが出現するまでは世界一とされていたらしい。
コーヒー生豆 インドネシア マンデリンG1 (1kg袋)
以上、代表的な銘柄として簡単に説明したが、僕はブラジル、コロンビア、タンザニアの3種を適当な配合でブレンドしている。
【焙煎について】
そもそもコーヒーに全く興味の無い人は、コーヒー豆が最初から茶色だと思っている人も少なくない。
本来、収穫されて乾燥されたままのコーヒー豆(生豆と呼ぶ)は薄緑色をしており、その後の焙煎の深さによって色が褐色から黒茶色にまで変化する。
焙煎度合いは一般的に飲用されているもので分類すると概ね8段階あり、煎りの浅いものから4種類がドリップコーヒーに適し、深いものから4種類がエスプ
レッソに適しているとされている。
その深いものから4種類とは下記の通りとなる。
(※勿論、エスプレッソ用に深煎りされた豆をお好みによってドリップコーヒー用として使用しても全く問題は無い。)
●イタリアンロースト→殆ど炭になる直前の状態で、色は限りなく黒色に近い。苦味を追求する人向けのロースト。
チェーン系のコーヒー豆店や、エスプレッソに関する知識の乏しい自家焙煎豆店の場合、何も考えずに「エスプレッソ用豆=イタリアンロ
ースト」と決め付けて焙煎されている事が多いので注意が必要。
また、ドリップコーヒー用としては、アイスコーヒーなどにこのローストが用いられる。
●フレンチロースト →フルシティでは物足りず、イタリアンでは苦すぎると言う人向けのロースト。
アイスラテにはこの辺りが合うと思う。
●フルシティロースト→現在、エスプレッソやカフェラテ用として最も人気のあるロースト。
豆の持つ甘み、コク、酸味、苦味が最もバランス良く味わえるローストとされている。
●シティロースト →ミルクと混ぜないエスプレッソ・ソロとして飲む場合に適したロースト。
イタリアではこのシティローストとフルシティーローストが主流。
(※同じイタリア内でも北イタリアでは浅めで、ローマやナポリ等の南イタリアでは深めのローストが好まれているらしい)
(↑左:焙煎前の生豆 右:焙煎後)
【挽き方について】
一般的に販売されているエスプレッソ用の粉は極細挽きが主流で、イタリアの有名どころのエスプレッソ用の缶入りコーヒーパウダーなども、一見するとまる
でココアパウダーかと思うほどの細かさである。
しかし自分で抽出直前に挽く場合、上記のように細かく挽いてしまうとポタポタとしか抽出されない場合が多い。
これは缶入りのパウダーは豆を挽いてから時間が経っている為にパウダーがさらさらに乾いているのに対し、挽き立てのパウダーはしっとりとした粘りがあ
るために、抵抗が生じて湯の通りが低下してしまう為と思われる。
(低価格帯のコーヒーグラインダー(ミル)の場合、意図しない細かさの微粉がフィルターの目詰まりを起こす原因にもなっている。)
そこで、実際に自分で挽く場合にはグラニュー糖ぐらいの粗さが丁度良いくらいになるだろうか?
このように、エスプレッソではドリップコーヒーに比べて粉の大きさによる違いが抽出結果に与える影響が大きいため、自分に合った微妙な挽き目加減に仕
上げるためにも是非ともコーヒーグラインダー(ミル)は用意したい。
但しコーヒーグラインダー(ミル)に関しても、エスプレッソ用に細かく挽くことができ、尚且つ手ごろな価格帯の製品は種類が少ないので注意が必要。
最も安価なのは、ポーレックスというメーカーの手挽きミルが2000円程度で販売されているし、電動ではデロンギのKG364Jというコーヒーグラインダーが13,0
00円〜15,000円程度で販売されている。
この「コーヒー豆を挽いて粉にする」という工程は何かと軽視されやすいのだが、実際にはエスプレッソマシンの性能差以上にエスプレッソの仕上がりと味に
大きな影響を与える部分になる。
その為、コーヒー豆の美味しさを存分に引き出したいという拘りをお持ちの方には、上に挙げた製品よりももっと上級の製品をお勧めする。
人気の高い製品としては、RANCILIO(ランチリオ)社のロッキーや、さらに最高級クラスには、世界中のトップバリスタ達に愛用されているMAZZER(マッツァー)社
の製品なども有名だ。(さすがにここまでは行き過ぎだが、、。)
これらのような上級クラスのグラインダーの場合、粉粒の大きさのバラつきが少なく、上にも書いたようなフィルターの目詰まりの原因となる微粉の発生が普及
価格帯のグラインダーよりも少ないため、かなり細かい粒の大きさで挽いてもスムーズな抽出が可能となる。
また、粉粒の大きさを細かくできる分だけお湯と触れ合う面積が増える事から豆の美味しさをより引き出す事ができ、クレマと呼ばれる泡も発生しやすくなる。
(クレマとは : エスプレッソを抽出する際に表面を覆う細かい泡のことで、豆の品質や抽出条件が良好であった場合に多く発生し、飲む時に舌触りも滑らかに
なる。)
↑上級クラスのコーヒーグラインダー(ミル)2機種。
(左:RANCILIO ROCKY :国内参考価格:71,000円)
(右:MAZZER MINI :国内参考価格:14万円)
【豆の購入について】
最も手軽なのは、イリーやムセッティ等、有名どころのエスプレッソ用コーヒーパウダー(挽き豆)を購入するのが手っ取り早い。
しかし、大手スーパーマーケット等のコーヒー関係売り場に、エスプレッソ用の豆やパウダーが陳列されていることは滅多に無い。
エスプレッソ用のコーヒーパウダーや豆を入手するためには、コーヒー専門店に足を運ぶか、あるいは通販を利用することによって、上記に挙げたような有名ど
ころのパウダーや豆を購入することができる。
また、全国チェーン系のコーヒー専門店やスターバックス、ドトールのようなコーヒーショップから、そのショップオリジナルの豆やパウダーを購入する方法もある。
その他では、自家焙煎のコーヒー豆店などから購入すると、オーダーを受けてから焙煎をしてくれるところが多いので、上記の中では最も新鮮な豆が購入できる。
また、上でも説明したように、豆は粉に挽いた直後から更に酸化が進み香りも飛んでしまうので、豆のまま購入して抽出直前に自ら挽くようにしたい。
【豆の保存について】
皆さんの中には、「コーヒー豆は乾物だから、常温のまま長期保存が可能だ。」などと思っている方はいないだろうか?
コーヒー豆から挽いた粉を、まるでインスタントコーヒーの粉のように取り扱っている人は結構多い。
また、一度開封された焙煎豆をまるで豆菓子のピーナッツやアーモンドのように常温のまま長期間保存できると思っている人も多い。
これは大きな間違いであり、焙煎されたコーヒー豆はむしろ生鮮食品として扱うべきもの。
コーヒー豆は焙煎された直後から酸化が始まり、想像以上に早く劣化してしまうものなのだ。
特にパウダー状になっている挽き豆の場合は空気に触れる面積が多いため、豆の状態に比べて更に寿命は短い。
一度開封された挽き豆をそのまま常温保存しようものならば、湿度の高い夏場などではあっという間にカビが発生してしまうので注意したい。
コーヒー豆が美味しさを維持できる日数については、保存環境や、或いはその人の拘り方によって大きな差が生まれる。
この場合の賞味期限とは「飲める、飲めない」という消費期限的な問題ではなく、風味と香りや味という嗜好の問題なので、賞味期限はその人によって異なる
とも言えることになる。
極端な例を挙げるとするならば、大手コーヒーメーカー製の挽き豆などでは常温保存でも未開封ならば1年間に設定されている場合も多い。
それに対し、拘りの強い人の中には豆の状態でも、焙煎後1週間以内が限界とまで言う人もいる。
まあ、一般的には冷蔵・冷凍保存の保管状態で、焙煎豆ならば1〜2ヶ月、挽き豆(粉)で10日〜2週間といったところではないだろうか?(共に開封後)
但し、冷蔵・冷凍保存をする際にも、冷蔵庫から出し入れする度に豆が結露してダメージを受けてしまうので、極力出し入れの回数を減らすためにも容器を小
分けして保存するのがベスト。
更に、スライスハムなどによく同封されている脱酸素剤の「エージレス」が入手できるならば、これを豆と一緒に入れておけば、より酸化を防ぐことができる。
また、最近テレビショッピングなどで紹介されている家庭用真空パック器なども良いかもしれない。
ちなみに余談だが、焙煎直後の"超新鮮"なコーヒー豆は真空保存することが出来ない。
何故ならば、コーヒー豆は焙煎後からおおよそ7〜10日くらいの間、炭酸ガスを発生させている。
その発生量は結構なもので、500ccビンの7〜8分目あたりまで焙煎直後の豆を入れてフタをし、翌日に開封すると勢いよく「ポンッ!」という音が鳴る程だ。
したがって、焙煎直後の豆を真空パックしてもすぐに炭酸ガスによって袋が膨らんでしまうのだ。
そのため、真空パック器を使用する場合はガスの発生が収まってからということになる。
しかし最も理想的であり、究極ともいえる保存方法は、焙煎前の生豆のままストックしておいて、飲むペースに合わせて自ら焙煎を行うことだろう。
1週間〜2週間以内くらいで消費できるだけの量を焙煎しておくことで、無理に冷凍・冷蔵保存をしなくとも、常温保存のままでも鮮度の良い状態でコーヒーを飲
むことができる。
あるいは自分で焙煎するのが無理ならば、自家焙煎店から1週間〜2週間以内くらいで消費できる分の焙煎したての豆を購入するという手段でも良い。
上の方では一般論として豆を冷蔵庫に入れて保存するのが良いとは書いているが、実は焙煎したての新鮮な豆を焙煎後から2週間以内くらいで消費できる
のであれば、むしろ冷蔵庫に入れずに常温のまま(真夏の場合は冷暗所)密封容器に入れておいた方が豆の熟成が進み、焙煎後5日〜7日目あたりをピー
クに香りや甘みが豊かになる。
(この期間については焙煎方法、焙煎度、保存環境、季節などで異なる。)
これを解り易いものに例えると、例えば大間の釣りたての本マグロがあったとしよう。
これを焙煎したての新鮮なコーヒー豆とすると、焙煎したての新鮮な豆をいきなり冷凍庫に入れるということは、折角の新鮮な本マグロをいきなり冷凍庫に
入れてカチンコチンな冷凍マグロにしてしまうのに似ているかもしれない。
豆を冷蔵庫に入れることで消費期限を長引かせることはできても、アロマや豆本来の甘み、コクなどの減少を止める事はできず、むしろ新鮮な豆の場合は
冷凍にする事によってこれらを犠牲にしてしまうと僕は感じている。
自家焙煎によるその他のメリットとしては、自分好みの微妙な焙煎具合に仕上げる事も自由自在となる。
また、生豆は焙煎された豆とは異なり常温のままでも1〜2年は保存しておくことができるため、キログラム単位での大量購入が可能となる。
そのため200gや400gづつ購入するのに比べてグラムあたりの購入単価が大幅に安くなるというメリットもある。
尚、自家焙煎による詳しいメリットについては別ページにて説明しています。→こちら
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