ゼンハイザー ダイナミックヘッドホン HD800

SENNHEISER Audiophile Headphone HD800




(注:下記のレビューはあくまでも私が個人的に感じたものであり、その感じ方には個人差があることをご理解願います。
   また、個人による感じ方以外に音源の質や接続機器等、再生環境によっても大きな差が生じる点もご理解願います。)

(撮影:とんかつサンド)  (2015年6月14日 内容更新)


【ゼンハイザー HD800とは・・・?】
このキーワードを聞かされた時、知らない人はもちろん何とも感じないだろうが、ヘッドホンに多少でも詳しい方の場合は思わ
ず表情が変わるはずだ。

ゼンハイザーとは、ドイツ・ハノーファーに本社を構える音響機器メーカーで、1967年に世界で初めてオープンエアー型のヘッド
ホンを開発・発売したメーカーとして有名だ。
特に2003年に発売されたゼンハイザーのフラッグシップモデルであるHD650は、オープンエアー型ヘッドホンの完成型とまで言
われており、世界中のユーザー達から高い評価を受けている。
そのHD650が発売される1年ほど前の2002年からHD800の開発プロジェクトはスタートした。
その開発コンセプトは「パーフェクト」とされ、約7年間の歳月を経た2009年の6月にHD800は発売された。

このHD800はゼンハイザー社の中でも特別なモデルであり、他の製品を製造している工場とは別棟にある最新設備のクリーン
ルーム内で特別に選任されたマイスター達が全て手作業で組み立てていく。
そのファクトリーはまるで医療機器でも組み立てられているのか?というくらい清潔で整然としている。
(あくまでもゼンハイザー社が公開している画像でしか確認はできないが、、、。)
そして完成したHD800は一台ごとに厳しいチェックを受け、一定の条件を満たした製品だけが出荷される。
その出荷ペースは1日に40〜50台ということらしい。
(注:現在のゼンハイザー・ヘッドホンはHD800以外、ドイツ国内では基本的に製造しておらず、例えばHD650はアイルランド製
 で、HD598は中国製となる。)

ちなみに、この出荷前テストの中には周波数特性の測定チェックも含まれているのだが、HD800を手にしたオーナーがドイツ本
国のメーカーサイトからシリアル番号とオーナー情報を登録することで、そのシリアルごとの測定データがドイツのゼンハイザー
本社からオーナーの元へ送付される仕組みだ。
(勿論、この測定データは日本国内にも送付してくれる。→僕のものは現在申請中につき、到着次第、この場で紹介したい。)
(2011年5月16日追記:測定データに関しては、下記2011年5月16日追加情報にて公開しています。)

「パーフェクト」なヘッドホンの完成を実現させるために、ゼンハイザーの持つ技術や新素材などを惜しみなく投入し、厳しい品質
基準を守る為にあえて大量生産を拒み、一台一台を熟練した職人が丁寧に組み上げていくという性質上、その販売価格も特別
なものになっている。
HD800が発売されるまでの約6年の間、ゼンハイザーヘッドホンのフラッグシップの座を守り続けてきたHD650の店頭販売価格
が4万円前後であるのに対しHD800の店頭販売価格は16万円前後となっており、約4倍もの価格差が生じてしまうことになる。

世間一般的には1万円を超えれば高額な部類に入るヘッドホンという製品において、たった1台のヘッドホンに対して16万円とい
う金額を支払う事はなかなか難しいと思う。
したがって、このHD800を手に入れる事が出来る方は金銭的に余裕のある方か、あるいは余程の変態さんのどちらかだろう(苦笑)
ちなみに僕の場合、HD800の購入価格を知った奥さんから、まるで変態でも見るかのような目つきで睨まれていることから、上記の
前者ではない事は確かだ(汗)

まあ、僕の場合はHD800の誕生に関する逸話を調べれば調べるほど、「これって、もしかしたら16万円でも安いんじゃね?」という変
な自己暗示に掛かってしまったのかもしれない(苦笑)
ちなみに、今回僕がこのHD800を購入するにあたり、近場に試聴できる環境が全く無かったため、一切試聴をせずに通販を使用して
購入をした。


【とりあえず箱を開けてみる】
それではいつものごとく、先ずはHD800の化粧箱から見てみよう。

サイズはかなり大きなもので、各寸法は横幅273mm、高さ350mm、奥行き148mmとなっており、何となくスーパー戦隊シリーズ
の巨大ロボのDX版フィギュアが収められている、あの大きな化粧箱を髣髴とさせる。(むしろ解りにくい?)
しかし、この化粧箱も実は単なる薄い「外皮」にすぎず、その中には略同サイズのハードケースが収められており、このケース
を開けるとHD800がただものではないオーラと共にその姿を見せる。

このハードケースの他に自動車のカタログみたいな作りの技術解説書&マニュアルも同梱されており、主要各国向けの言語で
書かれているものの、アジア圏は中国語と韓国語しかなく、何故か日本語版は無い。
それと日本語版の保証書も同封されている。


↑化粧箱のデザインは、大人向けのおもちゃの超合金魂シリーズみたい(?)



↑化粧箱の中にはハードケースが収められている。



↑ハードケースを開けると、眩いばかりのオーラと共に、HD800様がどうだと言わんばかりに
 堂々と鎮座している姿が目に飛び込んでくる(苦笑)



↑豪華な技術解説書&マニュアルには日本語版は用意されていない。
 一番上の地味な紙は日本国内用の保証書だ。


【ロボコップ的なデザインに潜む深い理由】
さて、実際にHD800を手にとってみると、とにかく巨大なハウジングに圧倒される。
前衛的ともいえるこのデザインと、やや青みが掛かった銀色のフレームと黒いパーツの色使いによって、僕は何故かロボコップを
連想してしまった(苦笑)
しかしこの一見奇抜に見えるデザインについても、実は大型ドライバーの性能をフルに活かすべく、素材や構造が音質に及ぼす
影響を徹底的に検討した結果、必然的に生み出された機能美とも言えるものなのである。

それは、ドライバーユニット背面のバッフル部にはステンレス製のネットが使われていたり、ハウジング外周のテーパー面には細
かい目の布のようなステンレスメッシュが貼り付けられているのだが、これらも単なる飾りではなく、全て音響効果を考慮した結
果採用されたものなのだ。

つまり、このHD800のデザインは音質には関係の無い無駄な「贅」を排除した結果の産物であり、まるでそれは同じように一切の
無駄を排除し、速く走ることを目的に設計を追求していった結果、誰の目から見ても美しいデザインとなったF1マシンのようでもあ
ると例えたら言い過ぎだろうか?

銀色に見えるフレームには、宇宙開発で使用されている「レオナ」というハイテク樹脂を基本的に使用しているが、ハウジング先端
部の丸い部分(High Definition Driver 300 Ωとプリントされている部分)にはマグネシウムかアルミなどの金属が使用されている
ようだ。

イヤカップの中を覗くと先ず大きく口を開けたイヤパッドが目に入り、その奥にダストプロテクションと呼ばれるメッシュが見える。
ちなみにこのダストプロテクションはイヤカップ内のどこにも固定されておらず、まるで靴の中敷きのようにイヤカップ奥に落とし
込まれているだけだ。
取り外してみると、スポーツ競技等でチームの区別をつけるためにユニホームなどの上に着る"ビブス"などの生地に使用されて
いるメッシュ布を型押しして成型しただけのようにも見えるのだが、純正パーツとして購入すると、なんと2枚セットで5,250円もする
から驚きだ。
更に驚くべきことに、イヤパッドにいたっては1セット(2枚)で15,750円もしてしまうのだ(驚!)

このイヤパッドについて詳しく調べてみたところ、HD800のプロモーション用VTRの中に「Luxurious Japanese Alcantara」というテロ
ップが入っていた事に気が付いた。
これについて調べてみたところ、東レが開発製造をしているスエード生地の最高級品である「アルカンターラ」という素材だというこ
とが判った。
このアルカンターラとは、鹿革の肌触りと耐久性の両立を目指して開発された人工皮革で、極細の繊維を精密に編み込んで作られ
ており、同面積あたりの価格はなんと本物の皮革よりも高価なのだという。
その優れた品質はフェラーリやランボルギーニ、マセラティ、アストンマーチンなど多くの高級車ブランドに認められ、内装の素材とし
て採用されているのだ。
たとえば近年のフェラーリの内装のあちらこちらに見えるバックスキンっぽい部分の殆どがアルカンターラによるものらしい。
なるほど、これなら15,750円という価格にも納得できる(?)



↑前衛的なデザインにも見える巨大なハウジングは、このHD800を強く印象付ける象徴的
 な部分とも言えるものだ。



↑巨大なハウジングに沿うように装着される、大きな口を開けたイヤパッド。
 その奥に見えるメッシュ地がダストプロテクションと呼ばれるもの。
 


↑そのダストプロテクションは、指で摘んで軽く引っ張るだけで簡単にペロンと剥がすことが
 できる。
 ちなみにイヤパッドもハウジングの外溝に嵌め込んであるだけなので、摘んで引っ張れば
 取り外すことができる。
 


↑ダストプロテクションを取り外すと、ヘッドホン用としては世界最大を誇る直径56mmのドライ
 バーを覗き見る事ができる。


【装着感は実に軽やか】
ケーブルは着脱式になっており、断線した場合の交換が容易になるだけではなく、サードパーティ製のケーブルへの交換も容易
に可能となる。
それにしても、このケーブルの太さといい、質感といい、何となくコタツの電源ケーブルによく似ていると思ってしまうのは僕だけだ
ろうか?(笑)
ちなみに嫌らしいようだがこのケーブル、純正パーツで購入すると19,800円もするのだ(苦笑)

ヘッドバンドは調整式になっているのだが、その時のカチカチとしたラチェット感(?)が何となくクルマのシートのヘッドレストを上
下に調節する時のカチカチ感に似ている。 (これも解りにくいか、、、。)

ヘッドバンドの頭頂部には、「SENNHEISER HD800」の文字とシリアルナンバー、そして「Made In Germny」が誇らしげに印字され
ている。

装着感は実に軽やかで、大きく口を開けたイヤパッドと広い空間のイヤカップにより、耳回り全体がすっぽりと覆われる。
耳そのものがイヤパッド内のどこにも干渉しないので、長時間の装着でも耳が痛くなるようなことはない。
ただ装着感が軽い一方、逆に側圧は結構弱目なので、真上や真下に顔を向けるとヘッドホンがズリ落ちそうになる。
頭部の小さめな方にとっては、もう少し側圧が強い方が良いかもしれない。

それと些細な事ではあるが、ヘッドホンを装着しようとして本機を両手で持ち構えた場合、「L・R」の表示が手前側に大きく記されて
いる点がとても判りやすくて便利だ。
まあ、HD800の場合は前後方向が一目見て判りやすい形状をしているので、まず左右を間違えることは無い。
しかしオーディオテクニカのヘッドホンなどは前後方向が解りにくい上に、L・R表示が横面に表示されているため、いちいち確認しな
くてはいけないのが少々面倒なのだ。

さて、次はいよいよ音に関するレビューに入ることにしよう。



↑金属製スリーブを採用した挿し込みプラグ。
 3.5mmプラグには対応していないので、必要ならば別途に変換プラグを用意しなくてはいけない。
 ケーブルは何となくコタツの電源コードにも似ている(笑)



↑ケーブルは着脱が可能となっている。



↑ヘッドバンドの調整機構は余計なガタ等も無く、高い精度で組みつけられている。



↑ヘッドバンドの頭頂部には、一つ一つにシリアルナンバーがレーザー印字によって刻まれている。
 




【メーカーの意気込みは理解できたが、肝心の音はどうなの?】
今回の試聴環境も前回、前々回のATH-W1000X/W5000の時と全く同じ。
自作PCにSound Blaster X-Fi Titanium HDというサウンドカードをPCI Expressスロットにセットし、このサウンドカードのフロントパ
ネル(PCケース的にはリアパネルになる)に装備されているヘッドホン端子にHD800を繋げている。
尚、HD800の挿し込みプラグは6.3mm標準プラグの固定式なので、別途に6.3mm→3.5mm変換プラグを使用している。
ドライバはオーディオモードに設定し、全てのエフェクト類は無効化し、当然イコライザもスルーさせている。
再生データに合わせ、出力形式も最高の24bit/192kHz出力にセットしている。(サウンドカードも対応)
再生ファイルは可逆圧縮のFLACファイル(16bit/44.1kHz〜24bit/192kHzまでの様々なジャンル )をVLCプレイヤーにて再生。
それと、自作ヘッドホンアンプにiPod nano(5th)をDockケーブル接続させた場合とiPod直挿しも併せて検証した。
ちなみにHD800はこのレビュー時点において、既に80h以上のエージングを済ませてある。

また、途中に耳をリセットする意味も含めて、オーディオテクニカのATH-W1000XとW5000を頻繁に着け換えての比較試聴を行っ
ている。

ちなみに、Titanium HDのレビューは→こちら

ATH-W1000Xのレビューは→こちら

ATH-W5000のレビューは→こちら

さて、実際に様々なジャンルの音楽を徹底的に聴いてみた。
このレビューを書いている時点でおよそ30時間ほど聴き込んだだろうか?
今のところはまだファーストインプレッションの域を脱していないと思うが、その感想としては、、、。

うぅ〜〜〜〜ん、、、、、、やられた、、、。
ヘッドホンでここまでの音の表現ができるとは正直驚き以外の何ものでもない。
実を言うと、全くエージングを施していない開梱一発目の試聴から思いっきりぶっ飛んだ。

多くのレビュアーが言う「比類なき広い音場」についてであるが、「なるほど、こういう事だったのか、、。」という、目から鱗が落ち
る思いである。
実は僕自身、この「広い音場」という表現に対し、ある懸念を抱いていた。
それは、広い音場であるが故に音の芯が遠くなってしまい、一音、一音の線が細い出音になってしまうのではないか?というも
のであった。
しかし、このHD800の広い音場とはそういうことではなく、楽器の一つ一つが発する音の面積が広いということであった。
つまりどういう事かと言うと、例えば直径が60cm程度の地球儀を自分の頭部にスッポリと被せたとしよう。
この地球儀全体が音場の範囲として、表面にある島や大陸が音の一つ一つだとする。
そこで、僕が当初懸念していた、音が遠くなる方向の広い音場とは、この被っている地球儀の直径だけが大きくなるイメージ。
この場合、地球儀の外径は2mや3mと大きくなっていっても、表面の大陸や島の大きさは直径60cmの時と変わらないものと考え
る。
すると、それぞれの音の間隔は広くなるが、自分から見える大陸や島はどんどん小さくなってしまう。

しかしHD800の場合、地球儀の直径は80cm〜1m程度に留まり、表面にある大陸や島の面積が通常のものよりも2〜4倍程度に
広がっていくイメージなのだ。
つまり、音そのものの厚みや解像感、重量感は高いレベルを維持したまま、尚且つ広い音場をも実現させているのだ。

一つの音質そのものに関しても、しっかりと実の詰まった剛性感あるものになっている。
低域から高域までの全域にわたり、丁寧に磨きこまれた宝石のように輪郭のはっきりとした解像感の高い出音だ。

低音の量も十分で、とても上質なものだ。
決して飽和したりボワつくことはなく、硬く弾むようなレスポンスの良い出方をしている。

中域の厚みも申し分ない。
広い音場と厚みのある中域というものはなかなか両立が難しいものであるが、このHD800はそれを高いレベルで見事に実現させ
ている。

高域に関してはエージング未実施時には若干耳に刺さるようにも感じられたが、その点に関してはエージングを勧めていくことで解
消された。
決して篭ることはなく、実に明瞭で伸びやかな高域となっている。

解像感に関しては、かつて経験したことが無いほど見事なまでの解像感になっており、その凄さは前回に取り上げたオーディオテク
ニカのATH-W5000を大きく上回っている。
しかも、一音一音があり得ないほど丁寧な出音になっており、かなりごちゃごちゃした楽曲でも、一つ一つの音をつぶすことなく綺麗
に出力している。
もはや、ある特定の楽器の「○○な音が・・」というレベルではなく、全ての音が実にリアルに生々しく再現されているのだ。

前にも取り上げたオーディオテクニカのATH-W1000Xの時にも、Sound Blaster X-Fi Titanium HDというサウンドカードとの相性が素
晴らしいと書いたが、このHD800とTitanium HDとの組み合わせに関しても見事なまでに良くマッチしている。
その表現能力は万能で、どんな音楽ジャンルも見事なまでの表現力を見せ付けてくれる。

それではTitanium HD以外の環境、例えばポータブルミュージックプレーヤーの代表選手とも言えるiPod nanoへの直挿しの場合で
はどうなのであろうか?
このHD800は300Ωというハイインピーダンスに設計されており、iPodはせいぜい30Ω程度までの負荷を想定して設計されている。
そのギャップによる影響を確かめるべく、無謀かもしれないが先ずはiPod nano(5th)に直挿ししてみる。

何とか音量こそ必要十分な量は確保出来てはいるものの、やはり電圧不足によるものと思われる音の痩せと若干の歪みが感じられ
る。
電池駆動の自作ヘッドホンアンプを介した場合はそれらの現象は感じられなかったことからも、このHD800を使用する場合は最低限
でもヘッドホンアンプを用意する必要がある。

例えば最も手軽に購入することができるヘッドホンアンプの一つとして、FiiOというメーカーから発売されているE1やE5などは3,000円
〜4,000円程度で購入することができる。
試しに我が家にあるFiiO E1を介してiPod nanoとHD800を繋げてみたところ、Titanium HDの音には到底敵わないものの、そこそこ普
通に高音質で再生された。
それもその筈で、FiiO E1とE5の仕様表を見ると「適応インピーダンス:16Ω〜300Ω 」となっており、HD800にも対応できることが確認
できた。 (FiiO E1のレビューは→こちら
(参考までに、Titanium HDは330Ωのヘッドホンにも対応できる旨が仕様表に記載されている。)

まあ、HD800を持っている、或いは入手しようとしている方が、ポータブルミュージックプレーヤーしか持っていないという状況はあり得な
いとは思うが、、、。


ちなみに話は変わるが、このHD800は開放型という製品の性質上、どうしても外部に音漏れが生じてしまうのだが、その漏れ方が半端
ではない(苦笑)
ハウジング外側の最も目に見える位置にドライバーユニットが位置しているため、かなり盛大に音が漏れる。
そのため、同室に自分以外の誰かがいる場合は気をつける必要があるだろう。


【最後に】
無駄な小細工や誤魔化しを好まないドイツの職人が本気で完成させたこのゼンハイザーHD800。
その実力は凄まじいほどの完成度であった。

W1000Xのレビューの中で僕はW1000Xに対し「完璧」という評価を下したのだが、W1000Xが「完璧」であるならば、このHD800は正
に「奇跡」の領域だ。

W1000XとW5000の比較をした後にこのHD800を体験すると、まるで小学生同士のケンカの中に大人が割り込むようなもので、上記
2機種のオーナー(僕も含む)には申し訳ないが、この2機種との比較では全くと言って良いほど勝負にならない。

日本のメーカーや海外メーカーを問わず、音質とは無関係な部分に高額な素材や装飾を施すことでグレードや価格を上げていくとい
った製品が存在する一方、HD800は完全にこれらとは対極に位置する製品であり、目には見えない本質的な部分に惜しむことなく
コストが掛けられているということが、実際にHD800を使ってみることで誰もが身をもって実感し、強く理解することができるはずだ。
(記:2011年5月2日)



↑オーディオテクニカが誇る、現行型2大ウッドモデルとゼンハイザーのフラッグシップモデルの顔合わせ。
 気のせいか、左のオーテク兄弟が若干ビビッているようにも見える?(苦笑) 


【↓2011年5月16日追加情報↓】(周波数特性データがドイツから届いた!)
先月末にHD800のオーナー登録を行ってから2週間ちょっとが経過した今日、ドイツ本国にあるゼンハイザー本社から、僕のHD800を
出荷検査する際に測定した周波数特性データが届いた。


↑発送日は2011年5月6日となっている。


封筒には2枚の書類が封入されており、1枚はお礼の手紙と、もう一枚が周波数特性の測定データだ。
ちなみに画像では判らないが、お札のような透かしが手紙の中心部に大きく入っている。
一方、測定データの方は、賞状のような厚紙となっている。


↑左が手紙で、右が測定データ。


海外にはHD800の周波数特性データを晒し合う掲示板が存在し、多くの周波数特性データを見る事ができる。→こちら
それらと比較すると、2009年の発売開始当初のものよりも後半のタイプ(僕のHD800含む)は、低域と高域が初期品のものよりも若干強調
気味の傾向にあるようだ。
初期品の方のデータを見ると、低域側の100Hzと高域側の12kHz共に+2.5dB〜+3.0dB程度に収まっているのに対し、2010年あたりに製造
されたものや、僕のデータは低域側、高域側共に+5dB付近まで達している。
途中からサウンドチューニングに何らかしらの変更がおこなわれたのだろうか?
そう言われてみると、発売開始当初に購入している方々のレビューを見た際に、低域が若干寂しいといった感想が見られたのに対し、僕の
HD800では全く不満がないことから、途中から何かしらの音質調整の変更があった可能性もゼロではないかもしれない。

いずれにしても、この様なちょっとした小意気なサービスが、HD800ユーザーとしての満足感を一層高めてくれる事は間違いない。



↑僕のHD800の実測データ。



↑画像をクリックすると、ちょっと大きな画像が見られます。 (約180KB)



↑画像をクリックすると、ちょっと大きな画像が見られます。 (約405KB)


【↓2011年6月5日追加情報↓】
HD800の持つポテンシャルを更に発揮させるため、USB-DAC内蔵ヘッドホンアンプとして、ラックスマンのDA-200を購入してみた。
詳しいレビューは→こちら



↑ラックスマンDA-200とHD800。
 

【↓2011年7月15日追加情報↓】<フェーズテックのヘッドホンアンプEPA-007を繋げてみた>
アナログヘッドホンアンプのP-1uが欠品中で入手困難なため、フェーズテックのアナログヘッドホンアンプ、EPA-007を試してみた。
EPA-007のレビューは→こちら


【↓2011年7月16日追加情報↓】<HD800のイヤパッドを洗ってみた>
HD800のイヤパッドは結構な大きさがあるために、頬の近くにパッドが位置することも多く、特に今頃のような暑い季節には汗や皮脂がパッドに
付着しやすい。
そこで今回は思い切ってイヤパッドを水洗いしてみることにした。

洗い方は下記の通り。
まず、イヤパッドを指で摘んで取り外すのだが、パッドだけを摘んで外すよりも、パッドの内側にある2mm厚くらいの黒いプラスチックのフランジプ
レートに指3本分の爪を引っ掛けて引っ張った方が、パッド生地に負担を掛けずに安心して取り外すことが出来る。

そして台所の瞬間湯沸かし器からお湯を流しながら、殺菌成分配合の薬用ハンドソープをタップリとパッドに浸み込ませ、パッドを優しく揉み洗い
した後、しっかりとすすいでタオルに余分な水分を吸着させるように脱水する。
後はイヤパッドを陰干しして乾かせばOK。
但し、作業は自己責任でお願いします。


【↓2011年7月22日追加情報↓】<ラックスマンのヘッドホンアンプP-1uを入手した>
結局、ラックスマンのアナログヘッドホンアンプであるP-1uを入手した。
DA-200は純粋にD/Aコンバーターとして使用し、ヘッドホンアンプのP-1uとバランス接続させている。
DA-200に接続させたP-1uのレビューは→こちら


↑ラックスマンのDA-200とP-1u、そしてHD800という夢の組み合わせが実現した。
 

【↓2011年8月26日追加情報↓】
今現在、僕は主にPC→DA-200→P-1u→HD800という環境で音楽を堪能している。
2011年8月26日現在までのおおよその音出し総時間として、HD800→1,000時間、DA-200→800時間、P-1u→400時間といったところだろうか?
(それぞれ概算による合計時間であり、その膨大な時間には、音出しによるバーンインの時間も含まれています。)

現時点において、このシステムによる音質に関しては、その音を聴く度に溜息が出るほど感動させられるばかりで一切の欠点や不満点は思い浮か
ばない。

高音質の基準というものは人それぞれだとは思うが、あくまでも僕の場合は「いかに楽器が本物の音っぽく聴こえるか?」という点が基準になってい
る。
つまり、「僕は低音多目が好みなので〜」とか、「僕は低音あっさりめが好きだから〜」という観点(基準)での評価は基本的にしていない。
しかし実際に楽器の音を本物っぽく再現させるためには、特に中低域側に相当な広いレンジの音を出力させる能力が無いと実現は難しい。

たとえばその一例として、8月18日にBS局で放送されていた「モントルー・ジャズ・フェスティバル」のマーカス・ミラーのライブを上記システムで視聴し
たのだが、マーカスが演奏に使用しているフェンダー・ジャズベースが放つ3〜4弦の音を、実際のライブ会場や練習スタジオ、あるいは自宅での自
分の演奏以外にここまで本物っぽく聴こえたことはない。※1

正に、ジャズベースとEBSベースアンプの組み合わせが実際に目の前にあるかのようなリアルさだ。
勿論、本物っぽく聴こえたのはベースギターだけではなく、ドラムから放たれるロータムの独特な「ダムダム・・・」といった音や、シンセサイザー、サ
ックスらもこれまでに体験したことのないリアルな音で再現されている。※2
(※1、※2:今のシステムを構築する以前まではという意味で、現在は上記のライブ以外にも様々な高音質音源からリアルな音を体験できている)


↑マーカス・ミラーとフェンダージャズベース
 


【↓2015年6月14日追加情報↓】
Youtubeにゼンハイザーの工場の動画がアップされており、HD800を組み付けている様子が確認できる。
この動画を観ると、HD800がいかに特別な製品であるかがよく理解する事ができる。




イヤホンTOPメニューへ

オーディオ&ビジュアル関係のトップへ

サイトトップへ